ポジティブに生きることを必死で学んできた
手形足形セレモニーの中で、YOSHIKIはこう挨拶した。
「僕は25年前にロスに来ましたが、そのときは英語がまったく話せませんでした。必死で勉強しました。僕ができたんだから誰でもできます。人種も出身地も関係なく、不可能なことはないんです。ギブアップしないこと。今日の栄誉は、去年他界した母に捧げます。どんなときも僕を信じてサポートしてくれました。母と十分な時間を一緒に過ごせなかったのが残念です。ごめんなさい」
その後行われた『YOSHIKI:UNDER THE SKY』のプレミアで、直接彼に心境を聞くことができた。ポジティブなメッセージが込められたドキュメンタリーの製作について、「大変な仕事だった」と振り返る。
「僕は深い悲しみや不幸に囲まれて生きてきた体験から、どんなときもポジティブに生きることを必死で学んできました。自分の生き方で元気づけられる人がいるなら、体験をシェアしようじゃないかと思うようになったんです」
パンデミックの中で「明日何が起こるか分からないのが人生。不安な毎日の中でお互いを励まし、助けあって進んでいかなければ」と思い、この企画を立ち上げたという。
「いろいろなミュージシャンに声をかけました。インターナショナルでエッジーなアーティストに協力してほしいと思ったんです。コロナ禍の厳しい制限の中でも、自宅のリビングルームからパフォーマンスを配信するのは嫌だった。広い空間を使った未来を感じるパフォーマンスを見て、気持ちを大きく持ってもらいたかったんです。まあ結局、コロナ禍の制限の中ではできないこともあり、完成までに3年かかってしまったけどね(笑)」
タイトルの“UNDER THE SKY”とは、「まだ空の上に行かず、なんとか生きている」という意味があるという。映画からは、彼が経験してきた悲しみが痛いほど伝わってくる。そして、人間は悲劇を乗り越えるたびに強くなれるということも。
アメリカ生活が長い筆者は、YOSHIKIの日本での活躍をリアルタイムでは知らない。しかし、いつ会っても謙虚で優しく、献身的でユーモアを忘れない人間であることは知っている。そして、日本人同士でありながら英語で会話をする機会が多い不思議な関係性だからこそ、常に進歩している彼の英語力と話題の豊富さに驚かされている。
ハリウッドに手形足形が刻まれたのは、異国の地で諦めずに前進し続けてきた、YOSHIKIの努力の証だと確信している。
文/中島由紀子
『YOSHIKI:UNDER THE SKY』(2023)
世界各国で、アーティストたちが思うように音楽活動ができず、ファンとの交流もできない。そんな過去に例がないほどの困難な状況の中で、「どんな困難も乗り越えていけるというメッセージを全世界に届けよう」というYOSHIKIの呼びかけから始まった全世界プロジェクト。YOSHIKI自ら監督を務めた。HYDE(日本)、SUGIZO(日本)、SixTONES(日本)、ザ・チェインスモーカーズ(アメリカ)、セイント・ヴィンセント(アメリカ)、ニコール・シャージンガー(アメリカ)、ジェーン・チャン(中国)、リンジー・スターリング(アメリカ)、スコーピオンズ(ドイツ)、サラ・ブライトマン(イギリス)など、時代の最先端を行く総勢10の世界的な著名アーティストらが参加している。
公式サイト:https://yoshikiunderthesky.com