『Fire』でギターに火を点けた
歯でギターを弾いたり、背面でギターを弾いたりと、数多くの衝撃的なパフォーマンスを生み出したジミヘン。中でも最も有名なのが、ギター炎上パフォーマンスかもしれない。
1967年6月。野外フェスの先駆け的存在となった「モントレー・ポップ・フェスティバル」が、アメリカ・カリフォルニア州の同地で3日間に渡って開催された。ジミは最終日にジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス(ノエル・レディング、ミッチ・ミッチェルらと組んだ3人組バンド)として登場。クライマックスでギターを燃やして観客の度肝を抜いた。
しかし、このパフォーマンスが最初に行われたのは、1967年3月31日のことだった。
場所はロンドンのライブハウス。ウォーカー・ブラザーズの解散ツアーの初日。前年12月『ヘイ・ジョー』でイギリスデビューしたばかりのジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスは、まだ前座として出演するバンドの一つに過ぎなかった。
ジミはどうすれば自分たちのステージを盛り上げられるか、出番を待つ合間にスタッフと楽屋で話し合っていた。この時、誰かが冗談のつもりで言った。
「もしジミがギターに火を点けたらどうなるかな」
その日の夜。ジミは最後の曲、その名も『Fire』でギターに火を点けた。
前代未聞のパフォーマンスに、観客が唖然としたのは言うまでもない。ちなみに手に軽い火傷を負ったジミは、出番が終わるとすぐに病院に向かったという。