素性を隠して週刊文春に20年以上投稿
「顔面相似形」という特集が「週刊文春」では毎年組まれる。20年以上続く大人気コーナーだ。〈人気〉ではなく〈大人気〉と〈大〉を付けるのは、私がこの特集に、20年以上、欠かさず応募し続けてきたからである。
『読売ウィークリー(現在は休刊)』にも「ギャグアップ・顔面」というコーナーがあった(こういう名称ではなかったが、こういう主旨の)。このコーナーにも応募し続けていた。
ほかにも同種の公募を見かければ、投稿していた。カオ助、ルー坊などといった投稿ネームとは別に、住所氏名も添えなくてはならない。これは複数の友人に頼んで借りていた。
姫野姓の人は存外いるので、そんな手間をかけなくてよかったのだが、「もし面識のある編集者が、このコーナーを担当していたら、おやっ、と気づかれて、知り合いの誼で採用してくれるかもしれない」と(甚だ自意識過剰で)思った。それは断じていやだった。縁故採用ではなく実力のみで採用されたかったのだ。ど真剣だったのだ。
20年以上、ど真剣に投稿してきた。何回か採用され、賞品(図書券など)ももらってきた。
「ねえ、Aさんて、Bさんとちょっと似てない?」「ああ、そうかしらね」などという、まるで「まだ暑さが残りますね」「そうですわね」といった無難な挨拶のようなおしゃべりを、地下鉄やジム更衣室やファミリーレストラン等々で、ときに耳にするが、そのたびに聞き捨てならない。
「ううん、ぜんぜん似てないと思う」と、いきなり割って入って異議を唱えたくなる。だれかとだれかが似ていることを、お天気の話題のようにおしゃべりしている人の「似ている」の組合せは、まず、似ていないからだ。
だれかとだれかの顔が似ている。これに気づくことを、私は《発見》と言う。自宅本棚には「似ている人発見」とラベルを貼ったノートがある。