世界三大宗教の信者数

「世界三大宗教」と言えば、キリスト教、イスラム教、仏教が挙げられます。実際の信者数で言えば、仏教徒よりもヒンドゥー教徒の方が多いのですが、信者の分布地域がより広い仏教が三大宗教にされることが多いです。それぞれの宗教は、どの国で信者が多いのか、また国内の人口に占める信者の割合がどのようなものかを比較してみました。

図表7-1は、キリスト教の信者数の国別分布を示しています。最も信者が多いのはアメリカで、国民の約8割がキリスト教徒で、このうち約7割がプロテスタント系の宗派に属します。2位のブラジルをはじめとした南米諸国やフィリピンではカトリックの信者が大多数を占めます。

5位のナイジェリアでは、キリスト教徒が多いものの、国内に占める割合はそれほど高くないのが特徴的です。砂漠の交易民との交流が盛んだった北部ではイスラム教徒が大半を占める一方で、植民地時代にイギリスの影響を受けた南部ではキリスト教徒が多くなっています。

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図7-1 世界の国別キリスト教徒の信者数。『ランキングマップ世界地理 ――統計を地図にしてみよう』より

図表7-2は、イスラム教徒の国別分布を示しています。

サウジアラビアのメッカを聖地とし、西アジアや北アフリカ諸国に多くの信者を擁するイスラム教ですが、国別の信者数を見ると、南アジアから東南アジアにより多くの信者がいることがわかります。最も信者が多いのがインドネシアですが、イスラム教を「国教」としているわけではなく、国内にはキリスト教徒(約10%)、ヒンドゥー教徒(約1.7%)などが多く暮らしています。

インドとパキスタン、バングラデシュは、1947年に「イギリス領インド」から独立する際に、別々の国になりました。「インド」に属するか「パキスタン」に属するかは、各州の実質的な統治者である「藩王」の意志によるものでした。

このため、国境地域を中心に、「インド」に属することになったイスラム教徒が多く発生しました。イスラム教徒の多い地域で構成された「パキスタン」は、インドをはさんで東西に領地を得ましたが、サイクロンの被害に対する中央政府と現地との対立から紛争が激化し、1971年に東パキスタンが独立して「バングラデシュ」になりました。

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図7-2 世界の国別イスラム教徒の信者数。『ランキングマップ世界地理 ――統計を地図にしてみよう』より

文化図表7-3は、仏教徒の分布です。

ネパールの首都、カトマンズ付近で修業をしたとされるガウダマ=シッダルタ(釈迦牟尼)とその弟子たちが広めたとされる仏教ですが、故国のネパールにおける推定信者数は約374万人(人口の約10%)しかいません。むしろ、長い時間をかけて伝播していった中国や東南アジア諸国で多くの信者を得ています。

アジア以外の地域で仏教徒が多い国はアメリカ(約417万人)、次いでイギリス(約380万人)、カナダ(約370万人)、フランス(約310万人)、ブラジル(約250万人)、ドイツ(約230万人)などがあります。アメリカやカナダへは中国、韓国や日本からの移民が多く、フランスやカナダへは、ベトナム戦争時に大量に移住したベトナムやカンボジアからの難民が多く移り住んだことが影響しているものと思われます。

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図7-3 世界の国別仏教の信者数。『ランキングマップ世界地理 ――統計を地図にしてみよう』より
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文/伊藤智章 サムネイル/shutterstock

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伊藤 智章
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人口はまだ増える? 自然環境は大丈夫? ランキングと地図で可視化すると、これまでと違った世界がみえてくる。トリビアな話題から深刻な問題まで総ざらい。

■以下の問題、どのくらい答えられますか?(答えは本の中に)

Q:太陽光発電の発電量、第1位の国は?
1 中国  2 アメリカ 3 オーストラリア

Q:一人当たり交通事故の発生件数が多い国は?
1 トリニダード・トバゴ 2 日本 3 モンテネグロ

Q:卵1パックの値段が一番高い国は?
1 スイス 2 韓国 3 エジプト

Q:2番目に人口が多い大都市圏は?
1 ニューヨーク  2 ムンバイ 3 大阪

Q:植林義務によって緑が増えている国は?
1 中国 2 ロシア 3 インド
Q:歴代最高気温を記録した国は?
1 サウジアラビア 2 アメリカ 3 パキスタン

Q:大豆の生産量、第1位の国は?
1 ブラジル  2 カナダ 3 ロシア

【目次】
まえがきに代えて

第1章 世界の自然環境
1 世界の屋根――高い山と長い山脈
2 世界の川――長さ世界一ナイル川の苦悩
3 世界の湖――名実ともに「海」になったカスピ海
4 最高気温と最低気温――地球温暖化と異常気象
5 回帰線に沿って広がる砂漠――砂漠化の進行
6 植林義務がある国もある――森林面積と森林の増減
7 氷に覆われた場所
8 世界の自然災害――地震・水害・火山災害

第2章 人口と都市
1 2秒で一人増える国は?――人口増加する地域
2 子どもが生まれにくい国々――合計特殊出生率の変化
3 リスクにさらされる子どもの命――乳幼児死亡率の変化
4 飢える人々――栄養不足人口率と栄養不足人口
5 SDGsの目標のひとつ――女性の教育水準と結婚年齢
6 東京は世界的にみても人多すぎ――大都市圏の拡大と人口増加
7 移民が「ふつう」の社会へ――人口の国際移動

第3章 産地は変化する 
1 日本は米の生産量10位以内にいるのか――米の生産国とその変化
2 小麦の最大の輸出国は?――小麦の生産と貿易の変化
3 需要が増える中国への対応――大豆の生産と貿易の変化
4 綿花の貿易はアパレルを映し出す――綿花の生産と貿易の変化
5 飼育頭数ランキング3位 羊――羊の飼育頭数と羊毛の貿易の変化
6 チーズ・バターのゆくえ――牛乳および乳製品の生産と貿易
7 とうもろこしは実は用途が多い――とうもろこしの生産と貿易の推移
8 「豊かさ」の象徴――牛肉の生産と貿易の推移
9 魚は限りある資源――漁獲量の変化
10 日本から中国へ――木材の生産と貿易

第4章 鉄鋼資源とエネルギー 
1 石炭の産出が増えている国は――石炭の生産と貿易
2 中国への石油輸入が増えた地域は――原油の生産と貿易の変化
3 国境を越えるパイプライン――天然ガスの生産と貿易
4 一番伸びている再生可能エネルギーは?
5 どうする?原子力――ウランの生産と原子力発電の現状
6 「鉄は産業のコメ」――鉄鉱石と鉄鋼の生産および流通
7 アルミの街はどこにある――ボーキサイトの産出とアルミニウムの生産
8 意外な産出1位の国は?――銅鉱石の産出と銅地金の生産

第5章 サービス産業と交通インフラ
1 20年で輸出額が一番増えた国は――世界の貿易と輸出入の伸び
2 海外旅行、コロナの影響は――旅行客の移動と観光収入の変化
3 宿泊施設の客室が一番増えた国は――宿泊施設数と宿泊者数の変化
4 アメリカの鉄道距離が減少した理由――鉄道の営業距離と輸送量の変化
5 一番乗降が多い空港は?――空港の数と利用客・貨物輸送量の多い空港
6 交通事故が多い国――道路の過密度とそのリスク
7 世界の船――船舶保有量と造船竣工

第6章 生活と文化
1 国によって働き方はこんな違う――労働時間の長さ
2 スイスの卵の値段は日本の何倍?――食料品の価格
3 世界の住宅事情――持ち家・賃貸補助・公営住宅
4 社会保障費の国際比較――日本よりも多い国・少ない国
5 活字メディアの現状――新聞と出版の国際比較
6 アフリカ・西アジアで伸びる携帯――携帯電話の普及と契約数
7 三大世界宗教の信者数 
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