党、内閣とも要職は留任ラッシュ
「しょせん、ただの『内向き人事』でしかない」
岸田文雄首相に距離を置く自民党ベテラン議員は今回の内閣改造・党役員人事をこう切り捨てる。
確かに新任のポジションもいくつかあるが、今回の人事の特徴は根幹の要職が「留任」となった部分にある。そこを見れば、まさに「内向き人事」の理由が分かる。
党人事では麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長、萩生田光一政調会長、内閣改造では松野博一官房長官、鈴木俊一財務相、河野太郎デジタル相、西村康稔経産相、高市早苗経済安保担当相ら、要となる人事はいずれも留任だ。
まずは茂木幹事長――。茂木派、麻生派、岸田派は政権を支える主流3派だが、茂木氏については岸田派幹部は交代の可能性も示唆していた。
主流3派とはいえ、岸田首相に尽くし、ひたすら舞台裏で支える姿勢かというとそうではなく、「ポスト岸田を視野に、総裁総理への意欲は満々」(茂木派幹部)だった。通常国会終盤以降の茂木氏の政治行動は活発で、アメリカなどを外遊し、外相時代からの要人と次々に会っている。
「外交は自信を持っている。アメリカに行ったのも岸田首相にレールを敷くためではなく、自分の独自のルートと人脈で意見交換した。明らかに自らの存在感を示すためのものだった」(外務省OB)
国内も精力的に回り、行った先々で首相と調整や擦り合わせをしていない独自の政策的発言を積極的に行った。
公明党との選挙協力では昨年の参院選以来調整に失敗し、つい最近まで東京の自公協力すら混乱した。岸田首相が今回の人事のあと、念頭に置くひとつが解散・総選挙だ。公明党との信頼関係に不安がある茂木氏をそのまま幹事長として残すかどうか、首相は迷ったはずだ。