「警察庁長官の嘘にカチンときた」自殺とする証拠はないと断言

2006年4月に、ナイフが頭上から喉元に向かって刺さった状態で見つかった安田種雄さんの死亡をめぐっては、「週刊文春」が、当時の妻だったX子さんが重要参考人として取り調べを受けていたことや、自殺とするには不審な点が複数あることを報じた。

これに対し、警察庁の露木康浩長官が7月13日の定例会見で「適正に捜査、調査が行われた結果、証拠上、事件性が認められないと警視庁が明らかにしている」と反論。

木原誠二官房副長官(写真/共同通信社)
 
木原誠二官房副長官(写真/共同通信社)
 
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この発言を知った佐藤氏は憤った。

「嘘を言っている。カチンときた。被害者がかわいそう。遺族はこんな終わり方をしていても、『警察には感謝している』って言ってくれた。その人たちをまた悲しませる発言には頭きますよね。遺族を逆なでするのは、間違っていると思いますよ」

そのうえで、X子さんの元取調官として、こう言い切るのだった。

「まずこれ断言しますけど、事件性はありですからね。俺が一番知っている。証拠を全部見ている。自殺と認定する証拠は、遺書とか、自殺しているのを見た人がいるとか。そういうのがあれば捜査をしないが、自殺だとする証拠は存在しない。何をもとに言っているのか。被害者のことを考えてもらいたい」

ただ、佐藤氏が捜査に関わっている間に、事件と断定し、容疑者を確定させるまでの証拠を固めることはできなかった。

「時間が足りなかった。いろんな人の供述も集めていたが、そこ(証拠)までいってない。途中で終わっているから……」

一連の捜査の中で佐藤氏が担当したのは、重要参考人X子さんの取り調べだった。
当時、X子さんは、寝ている間に種雄さんが死亡したという趣旨の話をしていたというが、「すべてが作り話」と佐藤氏は語る。

会見をする佐藤氏(撮影/集英社オンライン)
会見をする佐藤氏(撮影/集英社オンライン)

X子さんの印象については「(取り調べは)10日間くらいだから、すべてはわからないが、反応が素直。俺らもカマかけることもある。それに引っかかっちゃった可能性もあるが、時々『嘘だろ』とか言うと、ぴくっとする」と振り返る。

そんなX子さんを取り調べて2〜3日経つと、佐藤氏はある感触を抱く。

「あれはどうやったって、女じゃできない。無理。殺し屋じゃないんだから。ナイフを使うと、必ず手に傷がつくが、それもない。だからX子は違うんじゃないか」