フィンランド、スウェーデンがNATO加盟申請前から、日本は防衛駐在官を派遣

一方で、日本からフィンランドへの派遣は、どうなっているのだろうか。ヘルシンキに日本の陸軍武官が初めて派遣されたのは、1934年4月だった。海軍武官ではなく陸軍武官がまず派遣されたのは、フィンランドがソ連と陸上で国境を接していることを念頭に置いてのことだっただろう。

第一次世界大戦後には、ポーランド、ハンガリー、ラトビア、ルーマニア、そしてフィンランドといった国々に、まるでソ連を取り囲むかのように、駐在武官が配置されていった。仮想敵国であるソ連の周辺国において、情報収集にあたらせることが目的だった。派遣に際しては、情報収集という目的にかんがみ、語学能力も重視された。

フィンランドに派遣された海軍武官については、1941年まではロシア語修習者、それ以降はドイツ語修習者が派遣されている。ただしフィンランド人は、ドイツ語には応じるが、ロシア語は理解できても使わなかったという。フィンランドにおけるソ連への冷たい視線を物語るエピソードといえよう。

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現在では、在フィンランド日本国大使館に、防衛駐在官が配置されている。筆者の在外研究中は、陸上自衛隊から、鈴木2等陸佐が派遣されており、筆者もフィンランドで多くのことを教えてもらった。

北欧諸国への派遣状況を比較してみると、スウェーデンには1等陸佐が1名派遣されているが、ノルウェーとデンマークには実員は配置されていない。

日本としては、北欧諸国との防衛関係では、スウェーデンそしてフィンランドとの関係を重視しているということだ。NATOへの加盟を申請する前から、両国に防衛駐在官が派遣されていたのは、ロシアを念頭に置いてのことにほかならない。

なお、フィンランドの防衛駐在官は、エストニアも兼轄しており、駐エストニア大使の国防軍司令官への表敬に同席するなどしている。