コロナ禍の中での東京五輪開催に対する複雑な思い
東京大会は1年延期され、2021年に開催。谷さんは開会式での日本代表選手団の旗手を務めました。8月29日に開催されたパラトライアスロンに出場、1時間22分23秒でゴールをします。コロナ禍での東京オリンピックパラリンピック開催は、日本国内でもさまざまな意見があり、アスリートとして複雑な思いがあったことを振り返ります。
「招致から8年経ち、私は競技者としてはもちろん、招致側の責任も感じるところもあり、ずっと気にかけていました。普段なら応援されるはずのアスリートが攻撃されることが起きて、ちょっと世の中おかしくなっていたんじゃないかと思っています。みんな誰かに当たりたい、それがアスリートに向けられることが悲しかった。まるで自分が言われているように感じました。
結果的には、無事開催できてホッとしています。世界中の選手たちの輝きに満ち溢れる姿は、私にも大きなパワーをくれました。これが招致の時に伝えたかった、スポーツの力なんだ!と。人を前向きにしてくれるのは、この力なんだと確信しましたね。パラリンピックは、ダイバーシティにもつながりますから、開催できたことに意味があったと思います」
谷さんが東京2020パラリンピックに挑戦するまでの2年間を記録した本『パラアスリート谷真海 切り拓くチカラ』(徳原海編著、集英社)には、その詳細が綴られています。アスリートとしての強い信念、変化を受け入れながら進む柔軟性など、谷さんの異なる一面が感じられる一冊です。
家事は夫婦で50/50。気になることはその場で伝える
東京パラリンピックを終えた今、谷さんが考えていること。それは次の大会ではなく「人生の中にスポーツがある」「人生の延長線上にトライアスロンがあればいい」というフラットな思いだと言います。
「とりあえずは東京大会が目標だったので、今はゆっくりしています。1年延期もあり、家族の時間をたくさん犠牲にしてきました。今家族の時間を持てていることは、心の充実を取り戻す大事な時間だと思っています。今は週2、3回体を動かす程度ですね。ゆっくり走ったり、泳いだり。今のところ、絶対にパリを目指す!と思ってはいないのですが、完全にやめてしまうと次やりたいと思った時に大変なので、無理のない範囲で続けている感じです」
息子さんは4月から小学生に。育児や家事は、競技とどうバランスは取っているのか聞いてみると、こんな答えが。
「普段の食事は家族と同じものを食べています。みなさんと同じように、仕事から帰って食事の準備をしますし、忙しい時はテイクアウトを使うことも。パラリンピック前の1年間は、2週に1回家事代行をお願いしました。初めてそのサービスを使いましたが、作り置きを作ってもらえるだけでも本当に助かりましたね。夫は、週末に煮込み料理やカレー、チャーシューを作ってくれるんですよ。父親がフレンチのシェフだから本格的かも? 掃除は苦手で、夫からは“片付けれられない人”という位置付けで(笑)。家事は朝が夫、夕方以降は私が担当。ご飯を作るのは私で片付けは夫と、50/50になるように大まかに分けています」
お互いに気になることがあれば、その場ですぐに伝え、ストレスを溜めないようにしているそう。また夫婦でファッション好きで、週末に家族でショッピングに出かけることも。ちなみに撮影時に着ていた洋服は全て谷さんの私物です。
「夫が洋服好きで、私は自分のセンスがないと思っているので(笑)一緒に選んでもらうことが多いですね。昨日も、明日撮影なんだけどどうしよう?と相談して一緒に選びました。よく行くお店は、知り合いの店員さんがいるセレクトショップ。デパートに行くこともありますね。紹介してもらった服はトレンドも押さえつつ長く着られるので重宝しています」