子どもたちの知的なしんどさ

先ほども述べた通り、発達障害と知的障害、この2つは共通点もありますが、発達障害と知能の課題は別の問題と考えます。

もしも発達障害と知的障害が併発している場合、個人的には、まず知的なしんどさに対応することが先決と考えます。

日常生活や社会的な生活を送る上での困りごとは、知的なしんどさから生じる部分がほとんどだからです。発達障害に知的障害も伴う場合は、知能の程度(軽度・中等度・重度)がどうかという点が重要になります。

発達障害でもIQが高ければ、今の社会を生き抜いていく方法は少なからずあるでしょう。こだわりが強い自閉スペクトラム症の人が、興味や専門性が生かされるような技術職や研究職に就いて、高いパフォーマンスを発揮できることも見聞きします。

2018年に発表された「起業家とその家族における精神状態についての調査」(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)によると起業家の10人に3人は、発達障害のADHD(注意欠如・多動症)とのことです。日本でもニトリホールディングス会長の似鳥昭雄さんが診断を公表しています。ADHDの特性である行動力やアイデア力が、起業に生きるというのは想像しやすいでしょう。

「やっぱ無理!」が口癖の男児に下された”軽度知的障害”の診断…発達障害の影に隠れる子どもの知的障害をみわける3つのポイント_5

「軽度・中等度・重度」の程度の違い

知的機能の水準は一般的にはIQで表され、知的障害の基準のひとつに「IQ70未満」があります。障害は、その程度によって次のように4段階に分けられます。

•IQ50~69(おおよそ9~12歳)……軽度

•IQ35~49(おおよそ6~9歳)……中等度

•IQ20~34(おおよそ3~6歳)……重度

•IQ20未満(おおよそ3歳以下)……最重度

※()の年齢は、発達期を過ぎた成人に対する精神年齢です。

4段階のそれぞれの特徴は、次の通りです。各段階で、学力の習得が可能な年齢(学年)というのも付記していますが、あくまでも目安となる年齢です。支援次第で、目安の年齢以上に、成長をうながせる可能性はあります。