作品を通して発信した反戦メッセージ
一見ミステリ作家としてみなされがちな森村誠一ではあるが、実際は『青春の源流』シリーズや『非道人別帳』シリーズなど時代歴史小説においても才を発揮している。先述の『地果て海尽きるまで 小説チンギスハン』もその延長にあるといってよいだろう。赤穂浪士の討ち入りにも興味を示し、1986年に執筆した『忠臣蔵』は1989年のテレビ東京12時間ドラマにもなった。
晩年は写真を用いた俳句に興味を抱き『森村誠一の写真俳句のすすめ』などを出版しつつ、当時の安倍晋三政権が推し進めていた憲法改正に激しく反対の意を表明するなど、「日本を二度と戦争可能な国家にしてはいけない」という反戦と平和の思想を強く打ち出し続けた。
彼の反骨の信念は「証明」3部作や『悪魔の飽食』などの時代から晩年の最後まで変わることはなかったのだ。今改めて彼の小説や映画&ドラマ化作品を見直すことで、そういったメッセージをより感じることができるのではないだろうか。
そして「読んでから見てもいい、見てから読んでもいい」そんな小説と映画の麗しき関係性を教えてくれた森村誠一には、心より感謝している。繰り返すが、少なくともあの時期、小説&映画の『人間の証明』『野性の証明』に接していなかったら、私は今の仕事に就いていなかった。
文/増當竜也