通用しなかった日本の垂直統合型経営
――かつては「物価上昇率が2%であれば、その国は成長している」、世界にはそんなコンセンサスが横たわっていたように思いますが、それについてはどうお考えでしょうか?
物価が2%上がればすべてがうまく回る、良い塩梅になると思っていたのは、各国中央銀行がそれをインフレ・ターゲットとして目標としていたからで、それがいつの間にかグローバル・スタンダードとなったきらいがあります。
ただし、本来は物価が2%上がれば、賃金も2%上がらなければならない。賃金が2%上がるためには生産性も3~4%上がらないといけないわけです。物価だけ上げればいいんだとみんな安直に思ってしまったところ、それがとんでもないことだったという現実を今、突きつけられているわけです。
結局、日本は生産性を上げるしかないわけで、それには競争を厭っていては駄目なのです。国内での競争をしなければならないし、海外とも競争しないといけない。そして、競争に負けたら、次にまた新しいことに挑まなければならない。競争というと、「敗者は淘汰される」と考える人がけっこう多いのですが、それは正しくないと思います。「敗北したら、また頑張ればいい」が正しい捉え方です。
日本は1980年代後半にいったん勝者の側に立った。でも、そのときに敗者となったアメリカが追い付いてきて、瞬く間に逆転されてしまった。半導体などは、その典型例でしょう。
80年代から90年代前半にかけては日の丸半導体は世界のトップを走っていました。日本が「垂直統合型」経営でシェアを伸ばしていたのに対し、米国勢、台湾勢は効率的な「水平分業型」経営で、徐々に盛り返していき、日本の立場は揺らいでいきました。ただし、そこで意気消沈するのではなく、抜かれたところからどうするかが、肝要だったのですが。