コロナ禍前は一泊3万円のホテルに泊まっていた外国人が、今は5万円のホテルに泊まれるカラクリ
かつては世界経済を引っ張っていた日本だが、すっかり脇役扱いになってしまった感は否めない。今やチェコ、ハンガリー、ポーランドといった東欧の国にも平均賃金で抜かれそうになっているのはなぜか?『インフレ課税と闘う!』の著者で、第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏に話を聞いた。
インフレ課税と闘う!#10
今や「気の毒な国」になってしまった日本
――そうした現実を目の当たりにするにつけ、日本は世界の成長エンジンから外され、確実に脇役になっていることを、ひしひしと感じます。
とにかく日本はサービス産業(非製造業)に弱い、これが最大の弱点です。高齢化もネックですが、総じて日本は、サービスの“高付加価値化”に失敗していると私は捉えています。
周知のとおり、いまの日本ではインバウンドが復活して、ものすごいことになっています。訪日客はコロナ前と比べて1.3~1.4倍のお金を日本に落としているのです。
一例を挙げると、コロナ前は3万円クラスのホテルを使っていた外国人は今、一泊5万円のホテルに宿泊しています。先刻、自国通貨の価値が円に対して4割、5割も上がり、また、彼らの国の賃金が上昇したことがその要因です。
私の知人でコロナ禍前にアメリカに移住した友人がいるのですが、コロナ最盛期にレイオフになってしまいました。その時は「お気の毒に」と彼に元気づけの連絡をした覚えがあるのですが、レイオフから職場復帰した彼のサラリーはどんどん上がって、今ではグレードの高い地域に暮らし、豪華な愛車までを持つまでになったのです。
日本という島国にいると、今、成長している国と成長しない国との違いはインバウンドを通じてくらいしか見えませんが、日本は着実に貧しくなっています。
レイオフになった友人に「お気の毒に」と声をかけたものの、それから3年経って、どうやら本当に気の毒なのは自分だったことに気付かされたというわけです。
文/熊野英生 写真/shutterstock
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#9 日本人の実質賃金はこの1年間でひとり当たり約8万円も減少していた! インフレ下、国民の8万円はどこに消えたのか?
#11 近い将来、日本は80歳になってもがむしゃらに働く国に?“痛い目”に遭う前から始めたい資産防衛術
2023年5月26日発売
1,980円(税込)
四六判/344ページ
ISBN:978-4-08-786138-9
もはやインフレは止まらない!
これからの日本経済、私たちの生活はどうなる?
コロナ禍やウクライナ戦争を経て、世界経済の循環は滞り、エネルギー価格などが高騰した結果、世界中でインフレが日常化している。2022年からアメリカでは、8%を超えるインフレが続き、米国の0%だった金利は5%を超えるまでになろうとしている。世界経済のフェーズが完全に変わった!
30年以上、ずっとデフレが続いた日本も例外ではなく、ここ数年来、上昇してきた土地やマンションなどの不動産ばかりでなく、石油や天然ガスなどのエネルギー価格が高騰したため、まずは電気料金が上がった。さらに円安でも打撃を受け、輸入食品ばかりではく、今や日常の生鮮食品などの物価がぐんぐん上がりだした。2021年までのデフレモードはすっかり変わり、あらゆるものが値上げされ、家計にダメージが直撃した。
これからは、「物価は上昇するもの」というインフレ前提で、家計をやりくりし、財産も守っていかなければならない。一方、物価の上昇ほどには、給与所得は上がらず、しかもインフレからは逃れられないことから、これはまさに「インフレ課税」とも言えるだろう。
昨今の円安は、海外シフトを進めてきた日本の企業にとってもはや有利とは言えず、エネルギーや食料品の輸入が多い日本にとっては、ダメージの方が大きい。日本の経済力も、かつてGDPが世界2位であったことが夢のようで、衰退の方向に向かっている。日銀の総裁も植田総裁に変わったが、この金融緩和状況はしばらく続きそうだと言われている。
しかし日本経済が、大きな転換点に直面していることは疑いもない。国家破綻などありえないと言われてきたが、果たして本当にそうなのか?
これから日本経済はどう変わっていくのか? そんななかで、私たちはどのように働き、財産を築いていくべきなのか?
個人の防衛手段として外貨投資や、副業のすすめなど、具体的な対処法や、価値観の切り替えなども指南する、著者渾身の一冊!