GDPで間もなくドイツに抜かれる日本
――かつてとは異なり、日本企業の海外進出が進捗した結果、ここにきての円安は日本人の首を絞めるだけの状況になっています。バブル時代を知らない若い世代は、かつて日本企業が株式時価総額で世界の上位を独占していたと聞かされても、まったく理解できないそうです。
そうでしょうね。拙著で取り上げた「平均賃金の国際比較(ドルベース)」を見ると、いかに日本の成長力が低く、加えて昨今の円安により日本の賃金が割安になっているのかを痛感します。2021年の日本はOECD加盟国34カ国中24位。年々順位を下げており、2013年に韓国。2016年にはスロベニア、2020年にはリトアニアに抜かれてしまった。
このランキングの前提となる為替レート(購買力平価)は2021年1ドル=102.1円で計算されていますが、これが2023年6月現在の1ドル=140円の計算だと、日本はポーランドなどの中欧、東欧、ギリシャなどの後塵を浴びることになり、「安い日本」もここまで来たか、という感じです。
もう間まもなくGDP規模で日本はドイツに抜かれるのですが、人口の多い中国はともかくとして、日本よりも人口の少ないドイツに抜かれるのは衝撃的です。
ドイツの経済規模は、ユーロ圏の1/3~1/4を占めていますが、EU経済が東方に拡大していく中で、ドイツはEU域内で貿易を増やし、それが経済成長を遂げる原動力になっています。ちなみに、プーチンはおそらくこのEUの東方拡大と、ドイツの海外膨張を警戒して、ウクライナに侵攻したと私は見ています。
ここで興味深いのは、チェコ、ハンガリー、ポーランドといった、04年にEUに加盟した東欧の国々が、ドイツと連携したがためにどんどん生産性と、平均賃金を上げてきたことです。ポーランドとチェコの平均賃金は、すでに日本を射程圏内に捉えています。「強い者と組んで働くことで、弱かった者も強くなれる」はひとつの教訓といえるでしょう。