日本の木材自給率の低さ
一般的に森林で伐採された原木丸太は、製材工場に送られ角材や合板に変わる。それを建材工場が購入し、建築用部材に加工し、それを住宅メーカーや建設会社が調達する。これは単純化したサプライチェーンであり、実際には多層に入り組んでいる。伐採以降は、誰もが資本の論理で動いているから、高ければ国産のものを買わない。さらにサプライチェーンが多層だから、森林で伐採する業者は、その先のニーズがわからない。
またたとえば住宅メーカーは、工場で木材を規定サイズに切断・加工することを求める。ただ多様なサイズがあるため、国内では大量に処理することができなかった。
懸念される強度の問題も、CLT(Cross Laminated Timber)といった技術が進化してきた。合板とも集成材とも違い、木材の繊維方向を直交させながら積層するものだ。これで強度が安定する。しかし質が高くなってもコストの面での問題があり、道半ばだ。
さきほど日本の木材の自給率を見た。6割は海外に頼っている。輸入の内訳を見ると、丸太の6割ほどは米国に依存し、製材はEUとカナダ、集成材もEUと、特定国に偏る。もちろん多くは友好国だが、当然ながら、危機時には米国やカナダは自国を優先する。
たしかにこれまでは世界中に張り巡らされた調達網を使えば、必要な量だけを安価に購入できた。ただ森林大国であるはずの日本は、米国の新規住宅増に影響を受けるほどの脆さを露呈した。
文/坂口孝則
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