「ガイジ」と呼ばれた元防大生
「もう思い出したくないですが、自分はガイジと呼ばれていました」
そう話すのは、久保体制下で退校を余儀なくされた山本さん(仮名)だ。ガイジとは、「障がい児」から派生した言葉で、差別語に等しいスラングである。等松論考の公表後、編集部の取材に応じた防大の現役教官もこう証言している。
〈防大の学生舎で営まれている8人単位の共同生活において「できない」とされた学生に対して、「あいつ、ガイジだよなあ」などと陰でささやくのみならず、本人に対しても「お前は、ガイジなんだから」などと直接呼びかける。
特に問題なのは、これが不適切な差別を助長する語だという意識をもたない学生が多くいることです。1年時に〈ガイジ〉と呼ばれ、憤慨していた学生が上級生になると、同じ呼称を下級生に使うという事態が繰り返されています。
おまけに、学内で〈ガイジ〉の問題性を指摘すると「いい意味もある」と反論する者までいます。要するに「普通でない才能をもつ者」という意味で使われることがあるというのです。この詭弁は学生だけでなく、指導官(幹部自衛官)などからも聞いたことがあります〉(現役教官)
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等松教授のインタビューや現役教官によるこうした証言を掲載するにあたって、編集部は防衛大学校に取材をおこなったが、防大や久保学校長の弁明は、上述の『ガイジ』や、防大に補職される自衛官教官の適格性に言及した『咎人』【4】、あるいは『商業右翼』【4】といった核心的な問題をすべて避け、学生舎における学生たちの生活状況が「すでに改善されている」と主張するのみであった。