大学中退が招く経済的破綻…大学は伏せている!

中退・留年自体は、必ずしも悪いこととは限りません。ただ、結果的に非正規雇用や無職に追い込まれたり、貸与型奨学金の返済計画が崩れて経済的に破綻したりといった若者の増加を招いています。文部科学省も各大学に対し、中退抑制を求めています。

問題なのは、高校側がこうした実態を知って衝撃を受けているという点にあります。私はしばしば高校教員に対する研修の講師を務めていますが、この事実を知らせると「まさかこれほど高いとは」と一様に驚かれます。せいぜい数%程度だと考えていたそうです。高校生自身も同様で、「大学案内には就職率100%とあるので、中退する学生は一人もいないと思っていた」といった感想をよく目にします。

なぜこのように歪いびつな状況になっているかと言えば、最大の理由は「大学側が伏せているから」。

文科省は教育情報の公表を各大学に求めています。各大学の公式サイト内をくまなく探せば中退率の記載が見つかることもありますが、そこにたどり着ける高校生はほとんどいないでしょう。あえて探しにくい場所に置いたとしか思えないケースが多いのです。

大学進学者の8人に1人が辞めている衝撃の事実。指定校入学者8割、一般入試10割という中退例も…大学側が伏せる不都合な真実とは_2
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あえて志望大学の中退率を調べないワケ

進路指導において、68%の高校は志望大学の中退率を特に調べさせていません。大学中退者など極めて例外的な存在だと思われているからです。

各地の進路指導協議会などで地元の大学の中退状況をご紹介すると、高校教員たちは「早く知りたかった。知っていれば、送り出す生徒たちに対して必要な指導を施すこともできたのに」と声を上げます。

たとえば指定校推薦で合格した生徒にデータを示しながら、「薬学部は入ってからの勉強が大変なんだ。だから生物と化学をしっかり復習しておこう」といった指導ができたはずと言うのです。本来なら未然に防げた可能性のある中退も少なくないのです。

大学側がこうしたデータを積極的に公開したがらない理由もわかります。ネガティブに思われるデータですし、数字が一人歩きして「あの大学は進学すべきでない」という風評が立つことを恐れているのでしょう。

ですが、こうした広報のあり方を見直していかなければ、いずれ中退者の増加は大学の経営を圧迫します。1年次で中退した学生からは残り3年分の学費を受け取れなくなるのですから。長期的に見れば、地元の高校からの信頼も失っていくことになるでしょう。

中退率などの教学データを扱うのは教務課だが、高校側との窓口は入試広報課、といった部署間の壁も中退問題を見えにくくしてしまっています。裏を返せば、職員同士が協働することで解決の糸口が見えてくる可能性もあるということです。