#1:4600万円を騙し取られた2児のシングルマザー
#2:IT企業の会社員がセクキャバ嬢に…
#3:前編
踏みにじられた「助けてあげたい」気持ち
会ったことも話したこともない相手に、LINEでのやり取りだけで本気になってしまった60代の久志。そんな純粋な気持ちを見透かすかのように、幸子から立て続けにこんなメッセージが届いた。
「(1月)27日に(新潟を)出発することになっているのですが、まだ荷物が届いていません。支払いを手伝ってくれませんか。戻ってきたらお金をお返しします」
久志は「できることは何でもやります」と返信し、幸子の指示通りに動いた。彼女の口座があるネットバンキングにログインし、1万2760ドル(約132万3000円)の送金手続きを求められたが、どういうわけか途中でブロックされた。すると幸子はその金額を送金する必要があると言い出し、借金を申し出てきた。久志は戸惑いを隠せなかった。
「この時は不信感から抵抗もしましたが、結局、恋愛感情が勝って私が折れてしまったんです。助けてあげたいという気持ちのほうが上回ってしまいました」
自分の口座から指定された口座に振り込んだ。ところが銀行側から振り込め詐欺と疑われ、阻止された。これを幸子に伝えると、暗号資産での送金を提案された。久志にとって暗号資産は未知の分野だったため、友人に相談。その忠告を踏まえて送金に難色を示すと、幸子からこんな返信が届いた。
「私は人を騙すような女性ではありません。私はあなたに会ったことがありませんが、あなたとの未来を望んでいるので、私の銀行口座へのアクセスをお願いするほどに信頼していたのです」
それでも疑いが晴れなかった久志は、彼女にパスポートの写しを送るよう要求。すると、その通りに届いたため、
「OK。あなたを信頼します」
と伝え、幸子の指示通りに暗号資産140万円分を購入し、指定されたアドレス(銀行口座のようなもの)へ送付した。するとまたいつもの殺し文句が始まった。
「お母さんは元気?」
「愛している。あなたに会うのが待ちきれません」