知られざる子どもショートステイとは

藤田氏によれば、この「れもんハウス」の特徴は、居場所を提供するフリースペースの役割と、もう1つ「子どもショートステイ」という事業を同時に担っていることだと説明する。

「子どもショートステイとは保護者の都合で、昼や夜に子どもを養育できない事情がある子を預かる公的な制度です。例えば、親の病気や事故、冠婚葬祭や出張などで子どもの面倒をみる人がいないとき、最長7泊を限度に、子どもを預けることができます。また、育児疲れや育児不安に悩むお母さんも、子どもを預けられるんです。今、全国の各自治体にはそうした制度があり、うちは新宿区に登録して、子どもを預かっています」

花壇をいじる藤田氏
花壇をいじる藤田氏

新宿区のホームページによれば、ショートステイは生後60日〜18歳未満までの子を、預けることができる制度。2歳以降の子は協力家庭に預けることになる。協力家庭とは一定の条件を満たした家庭で、保育士や教員、看護師などの子どもに関する資格所持者、もしくは区が定めた認証研修を受けた者が協力家庭として登録できる。この「れもんハウス」も、協力家庭として新宿区に登録をしており、区から紹介された子どもを受け入れている。

「ショートステイは1日3000円で利用できますが、所得に応じて無料になるケースもあります。ショートステイを受ける際、国や自治体から委託費を受けますが、十分ではないので民間の助成金や寄付などで運営をしています」(藤田氏)

ショートステイを利用する際は、まず利用者と協力家庭の“顔合わせ”を行う。そこでお互いの希望や雰囲気などを確認するという手順を踏む。宿泊を伴う際、「れもんハウス」ではスタッフが最低2人常駐するという。

そんな「れもんハウス」の中へ実際に入ってみると、ごく普通の家庭にあるような、ありふれた日常が広がっていた。玄関横には台所があり、慌ただしく夕食の準備をする女性。奥には約20畳のリビングルームがあり、ローテーブルが4つ置かれている。リビングでは、ギターを弾く子、テレビゲームに興じる子、漫画に夢中になっている子など、中学生から専門学校生の男女が思い思いに自由な時間を過ごしていた。この他、1階には6畳程度の居室が1つ、2階には5畳ほどの居室が2つある。

「れもんハウス」のリビング
「れもんハウス」のリビング

「ご飯できたよ。誰か運ぶの手伝って」

夕方、台所に立つスタッフの女性がリビングに向かって声をかけると、くつろいでいた青年が立ち上がり、夕食の準備を手伝う。

「〇〇君、そろそろ塾の時間でしょ」「〇〇ちゃん、これ片付けなきゃダメじゃない」

リビングでは藤田氏が子供たちに声をかける姿もあり、歳の離れた男女が、まるで家族のような共同生活を送っているように見えた。