なぜ今年はクマの目撃数が多いのか

今回は加賀支部のなかでも腕の立つ3人の精鋭が建物の入口付近で待機したが、建物の窓は開いているのに、その下の地面にはクマの足跡がなかったという。

「物音も確認できず『クマがいるのかいないのか分からない』という状況が何時間にもわたって続きました。猟友会は警察の指示がない限り建物には入れないし発砲もできないため、長い待機時間に『まだクマ見つからないのか』『もう逃げたんじゃないのか?』と焦りを見せるものもいました。我々がふだんクマの駆除に向かうときは、目撃者やクマの足跡を目印に探すので、比較的短時間で駆除は終わります。しかし今回は、建物の中に立てこもっていて足跡も確認できないので本当にクマがいるか分からなかった。待機時間中もずっと不気味さはありましたね」

ツキノワグマ(写真はイメージです)
ツキノワグマ(写真はイメージです)

加賀市のクマの目撃数は、今年4月から7月19日までで37件。クマが大量発生し、『アビオシティ加賀』の店内にクマが立てこもった2020年よりも20件も増えているという。
小谷口支部長はこの原因について、こう分析する。

「ひとつ要素として挙げられるのが、コナラやミズナラという木に実る『ドングリ』が豊作だということでしょう。加賀市の山林部ではここ2年ほどドングリがよく獲れているのです。ドングリは栄養素が豊富で、豊作の年には、ドングリを好むイノシシに脂がよく乗っていることが知られています。ドングリはクマの大好物でもあるので、たくさんドングリを食べたことで多く繁殖し、親ばなれした子グマが人里に現れるようになったのではないかと思われます。また、猟師の減少も一因とみられます。猟師は年々減少していて、今では猟友会加賀支部のなかでも、10人ほどしかいません。推測かもしれませんが、ここ数年で明らかにクマが増えていることは、班員みなが実感していることです」

ドングリで腹を膨らませるクマにはなんの罪もない。ただ、事故に発展することがにないよう、対策はしっかりせねばなるまい。

ドングリ(写真はイメージです)
ドングリ(写真はイメージです)
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班