最初はお店の宣伝のつもりだったが…

大阪・京橋駅を下りて徒歩8分、国道1号線沿いに現れる4階建て住宅。その縦長でやや古ぼけた建物の各階の出窓に目をやると、ずらりと並べられた……もとい、ぎっしりと詰め込まれた無数のリラックマが、天下の往来を見下ろしている。

大阪・京橋の“リラックマビル”
大阪・京橋の“リラックマビル”
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この建物には計500個以上のリラックマグッズが所蔵されており、窓から外界をのぞくこのぬいぐるみの数々はそれらコレクションの一部だ。外観のあまりのインパクトに、人々はこの建物を“リラックマビル”と呼び、京橋ではちょっとした名物となっている。

ただの住居を世にも奇妙なリラックマビルに変えてしまったのは、隣接する焼肉店「十八番」を夫とともに経営する落合ひとみさん、60歳。事の発端は15年前だった。

「部屋の掃除中にたまたまぬいぐるみを窓辺に移動させたら、向かいのオフィスビルの人がニコッと笑ったんです。それを見て『リラックマのぬいぐるみに店名の書かれたハチマキを巻いたら、宣伝になるんちゃうかなー』と、“商人魂”が出てきまして(笑)。気がつけばこんなに増えてしまったんです……(苦笑)」

2階の出窓
2階の出窓

見たところ“ハチマキリラックマ”はいないようだが、いずれにしても本格的に収集し始めてからわずか3年で、1階から4階まで数百体のぬいぐるみで埋め尽くされたリラックマビルが完成。
窓辺以外でも室内にはあふれかえるぬいぐるみたちが。しかし、もちろんこの建物はひとみさんひとりで住んでいるわけではない。

「主人のほかに2階は祖父母、以前まで4階には子どもも住んでいましたけど、晴れでも雨でも外に出るまで天気がわからないから、子どもが『ぬいぐるみのせいで、日がまったく当たらんやんけ!』とブーブー文句を言ってきたこともありましたね。まぁ、うちで一番強いのは私なので、みんな折れてくれましたけど」