30年後に残るのは本州だけ
2023年、国立社会保障・人口問題研究所は2070年までの人口予測を発表しているが、予測可能な限り、人口減少が停止することや増加に転じることはない。さらにその先も同じ状況が想定されている。つまり、現在、日本に生きている人の大多数は一生のうちに「今年は日本の人口が増えました」というニュースを聞くことはない。
国立社会保障・人口問題研究所の予測では、2056年には9965万人と1億人を割りこむ。2056年と言えばはるかに遠い未来のように思えるが、コロナ禍の影響もあり、数年前倒しになると予測されている。そうなれば25年程度でそれが現実となる。
ではこれから減少が予測される2500万人とはどのような規模なのか?
九州の人口が約1400万人、北海道が530万人、四国が370万人であることを考えれば、ほぼ九州、北海道、四国の合計に近い人口減少がこれから30年強の間に一挙に起こることになる。つまり今、本州に住んでいる人口しか残らないということだ。しかも、世界一の日本の高齢化は2040年を超えて続いていく。
高齢化の象徴「人形村」
その日本の高齢化は世界でも広く知れわたっている。
筆者はアメリカのベテラン・ジャーナリストの日本での取材を支援したことがある。ナショナル・パブリック・ラジオの記者、アイナ・ジャッフィ氏が関心を持ったのが四国の山奥にある「人形村」だった。
それは徳島県三好市の標高800メートルの名頃集落で、100体以上の人間を真似たかかしが村のあちこちに置かれている。かかしは言ってみれば、人がいなくなった村の「バーチャルな村民」と言えるかもしれない。
大阪から故郷の名頃に戻った女性がこつこつと作り始め、数十名の村落の人口をはるかに超えるかかしが限界集落となった村のあちこちに置かれている。一見、シュールともいえるこの光景をアメリカ人の記者は高齢化日本を象徴する場所と考えた。
人里離れたこの場所を訪れ、これらの人形を作った女性作家と会った記者は、作家との対談を通して人形村の様子を全米に報じた。