「初夜」というシステムは理にかなっていた
では、今はどうなのだろう? 「お見合い」の代わりにアプリがある。
「アプリで確率が90パーセントだったから」「マッチングしたから」「『いいね!』が50ついていたから」……。AIによる相性やおすすめのサポートでマッチングして、その後もAIの指示で結婚という目的地にオートマティックに連れて行ってもらえるのなら、こんなに楽なシステムはない。でも現実にはマッチングしてから交際、結婚にたどりつくまで、2人で試行錯誤しながら進まなければならない。
運よくおたがい恋に落ちて真剣な恋愛の末に結婚する人もいれば、ある程度、打算で相手を選ぶ人もいるだろう。アプリ婚をした人の中で何割ぐらいが、恋愛感情なしのまま結婚しているのか?
恋愛感情がなくてもおたがいへの配慮あるコミュニケーションがあれば結婚は成立するが、非性的関係のままでは長続きはしない。つまり「初夜」というシステムがあった昔のお見合い婚システムは、ちゃんと理にかなっていたということになる。
ヒロさんの場合は配慮あるコミュニケーションは取れていたが、非性的すぎて個人的な親密さがあまりに薄かった。
ではキスをしたりハグをしたり、あるいはセックスをすればよかったのか、というとそういうことでもない。非性的な「社会的存在」としてのヒロさんは印象に残ったが、性的な個体としての彼がまったく見えなかったのが、それ以上進めなかった理由かもしれない。
リョウさんとヒロさんは性的なプレゼンでは真逆の2人だったが、どちらもマッチング依存の相手の中ではかなり印象的だった。リョウさんは性的なアプローチしか知らず、ヒロさんは非性的なアプローチしかできなかった。やはり両方できて初めて本物のマッチングなのだ。この2人との出会いでそれを痛感した。
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