ニッポン美食立国論#1

世界有数の美食の街はいかにして発展したか

20世紀から21世紀に移り変わる時期、欧米ではかつてのフランス料理、イタリア料理から、スペイン料理へトレンドは移り、いまでは南米料理の中でもペルー料理、北欧料理へと移っています。
「世界のベストレストラン50」でここ数年、トップレベルにいるのはそれらのレストランです。

2023年1月に、何度も1位に輝いたことのあるデンマークのレストラン「ノーマ」が、エル・ブジ同様に閉店するというニュースが世界中を駆け巡りました。世界中から客が訪れるとはいえ、北欧のレストランが閉店することが世界中のニュースになるなんて20世紀には考えられなかったことでしょう。

ちなみにノーマは2023年3月から5月まで、京都でポップアップレストランを開催しましたが、1泊2食付きとはいえ、ひとり約25万円でした(ディナーのみの場合は10万円以上)。しかし、現地に行くことを考えれば安いし、そもそも現地でももう味わえないと考えるフーディーたちが殺到。発売後、わずか10分ほどで完売しています。

また、同じデンマークのフェロー諸島でミシュランの星を獲得したレストラン「コックス」は、ミシュランから「世界で最も遠隔地にあるレストラン」の称号を受けていたのに、「自分のレストランで食事をするためだけに来てほしい」と考え、さらに遠くへ移転。グリーンランドの北極圏に位置し、船かヘリコプターでしかいけない場所であらたに開業しました。しかし、そんな辺鄙な場所でも、美味しいものを食べられるならフーディーたちは出かけるのです。

その流れを作った先進的なレストランがエル・ブジであることは間違いありませんが、もうひとつ、美食の街・サンセバスチャン(ドノスティア=サン・セバスティアン)の発展も大きな要因だといわれています。

私もサンセバスチャンには、コロナ禍になる前の2019年までに3度、訪れています。
最近、日本各地で「××市(県)のサンセバスチャン」というフレーズを聞きませんか。

食を使って町おこしをしようとすると、どうしてもサンセバスチャンの成功例に学ぶことになります。サンセバスチャンは世界中で食を使った町おこしに成功した随一の例だからです。

「世界のベストレストラン50」とは、世界中の食通や批評家からなる審査員によって選出される、世界最高峰のレストランランキング。

世界一熱い美食の街、スペインのサンセバスチャン。美食が金を生む、日本が見習うべき美食の街づくりとは?_1
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