インドが日本に期待していること…中国とインドの戦争になったとき日本はどうする
対米同盟を基軸とした先進国である日本と、戦略的自律性を維持するとともに、みずからを途上国、「グローバル・サウス」に位置づけるインドとのあいだで、そもそも利害がすべて一致するなどということはありえないし、多くの部分で一致するとすらいえないかもしれない。
それでも、インドの現在、そして今後の影響力の大きさを考えれば、一致する部分を探して一緒に行動し、ウインウインの関係を創りだすことが求められるだろう。先に挙げた安倍―モディ時代の成果は、その可能性を示唆している。
そうなると、まず着手しなければならないのは、相手側がなにを望んでいるのかを正確に把握することだろう。この点で間違いなくいえるのは、安全保障面でアメリカが日本に対して果たしているような役割は、日本に対しても、アメリカに対しても、インドが期待しているわけではない、ということだ。
それは、戦略的自律性を重んじて同盟を忌避するがゆえの話だけではない。そもそも、アメリカや日本が、インドのために、中国やパキスタンとの陸上での戦いに命を懸けてくれるなどとは考えていないからだ。
もちろん、ウクライナにアメリカが行ったような兵器供与や情報提供は、インドも期待しているし、実際に2020年以降の中国との軍事対峙のなかでも行われた。しかし、それ以上の協力は、ウクライナの事例をみても考えにくい。
アメリカは1人の兵士も戦場に送っていなければ、ロシア本土の攻撃を可能とするような兵器の提供にも、慎重な姿勢を示しつづけた。バイデン大統領が吐露するように、ロシアとの直接の衝突は第3次世界大戦の勃発につながりかねないからだ。こうしたことを踏まえると、アメリカも日本も、中国との全面戦争につながるような戦いには、巻き込まれたいと思うはずがない。インドはそうみている。