活発な兵器の購入…世界第3の軍事力を持つインドの恐怖
経済成長のおかげで、軍事費も増えつづけている。GDPに占める割合でいえば、およそ2.5~3パーセント程度で大きな変化はなく、けっして背伸びをしているわけではない。とはいえ、長くGDP比1パーセントの枠に固執し、経済もゼロ成長のつづいてきた日本とは対照的だ。
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)のデータベースによると、インドの軍事費は2014年に日本を抜き去り、17年にロシア、19年にはサウジアラビアを上回った。GDP同様、アメリカ、中国の2強とは格段の差があるとはいえ、軍事費では、すでに世界第3の軍事大国となっている(図表20)。
これだけの潤沢な予算があれば、当然、人員と装備を充実させることが可能になる。もともとインド軍は、人員としては多く、今世紀初めの時点でも126万の規模を誇っていた。しかし、2022年の『ミリタリーバランス』によると、現在では中国に次ぐ146万人もの正規兵を抱えている。
じつは、インドにはこれ以外に、中央警察予備隊や国境警備隊などの「準軍隊」が160万人もいる。これもくわえると、中国を上回る世界一の人員ということもできる。ただ前述したように、インドがこれまで抱えてきた脅威は、中国、パキスタンであったこともあり、そのほとんどは陸軍に偏重している。それでも海軍7万、空軍14万という兵力は、日本の海上自衛隊4万5000、航空自衛隊4万7000を凌駕する規模だ。
急速な軍事費の伸びは、もちろんこの多くの兵士の福利厚生向上にも使われているが、世界が注目するのは、活発な兵器の購入だ。とくにこれまでは日陰の存在だった空軍や海軍は、ここぞとばかりに最新鋭の兵器調達に乗り出した。
これまで旧ソ連時代の戦闘機ばかりだった空軍は、次世代戦闘機としてフランスのラファールを選定し、2021年、緊張のつづく中国との前線に配備した。海軍は、冷戦期に導入されたイギリス製空母の退役を先送りして、「騙し騙し」使いつづけていたが、2013年にロシアから新たに空母を取得した。
さらに2022年には、ついに初の国産空母も就役した。このほか、核弾頭搭載可能な大陸間弾道ミサイル、アグニVの開発も進む。宇宙分野への進出にも積極的だ。アメリカ、ロシア、中国に次いで、2019年には対衛星破壊兵器(ASAT)実験に成功している。軍事面で、インドがもはや侮れない存在になってきているのは明らかだ。