番組ディレクターが見た学校現場「先生の働き方の取材、嫌がる」
実際の学校はどのようなものなのか。
学校現場に半年間密着取材をしたドキュメンタリー番組がある。2019年に福井テレビが制作した「聖職のゆくえ~働き方改革元年~」だ。ナレーションを人気俳優である菅田将暉さんが務めたこともあって放送直後から話題となり、民放界では最も権威ある賞の一つと言われる日本民間放送連盟賞の準グランプリを獲得した。
番組作りをほぼ一手に引き受けたディレクターの小川一樹さんは、当時を振り返ってこう述べた。
「当時、福井市内の多くの学校から取材を断られました。学校内にカメラを入れることは、今もそうだと思いますが、それほど難しいことなのです。特に先生方の働き方をありのまま描くような番組でしたから、なおさら交渉が難航しました。最後にすがるような思いで私の母校の福井市立足羽中学校を訪ねました。そこの森上愛一郎校長(当時)は、むしろ『現場の様子を一人でも多くの人に見ていただきたい』と考えてくれたようで、職員会議を含めて学校内を自由に撮影することを許してくれたのです」
遅くに帰宅して、ご飯食べてない子どもを見て涙したワケ
番組で印象深いのが、足羽中学校の教師たちが小川ディレクターにすっかり心を許して話をするインタビューの数々である。二人の子どもを持つという女性教員は、子どもが幼い頃に何度も教師を辞めようと思ったと言う。
「どうしても早く帰れない時期があって、家に帰ると子どもたちがご飯も食べず、お風呂も入らず、床で転がっているんです。それを見たときは、涙が出そうになりました」
一児の父である男性教員は、1週間の時間外勤務が26時間、月換算すると優に100時間を超えるペースだったが、「残業しているという意識がなかった」と話した。
「生徒は(定時前の)早くから(定時後の)18時半までいて、それが当たり前になってしまっているので。正直(背景にある法律の問題など)考えたこともなく、しょうがないなという(意識でした)」