見直された修学旅行の意義と
令和も変わらない学生の姿

現在教育的な観点からも、修学旅行の大切さが改めて見直されているという。2021年度から中学校で、2022年度からは高校においても、教育の基本方針となる「学習指導要領」が改訂され、学校教育において “探究学習”なるものが重要視され始めた。

“探究学習”とは、生徒自らで課題を設定し、その情報収集・整理分析を行なった上で、最後にまとめを発表するというもの。現代社会を生き抜く力を、中高生の時から身につけてほしいという意図から、従来の“詰め込み型”とは異なる学習方法として誕生した。

「簡単に言えば、自ら考えて行動できる生徒を育てる、というのが探究学習ですが言葉にするのは簡単なものの、それを授業に落とし込むのは難しい。ただ、それを修学旅行と結びつければ、“なにを学びたい?”という入り口から課題を設定し、事前に調べて学び、現地に赴き実際に体験し、自らの仮説が正しかったのかを検証して、修学旅行が終わった後にまとめて発表する、といった方法を取ることができます。

つまり、コロナ禍の収束と学習指導要領の改訂が相まって、以前よりも学習的な意味合いが強まった修学旅行が増えているのだと感じます」

写真はイメージです
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本来の修学旅行がようやく戻ってきたことに対する、生徒と先生たちのリアルな反応はどうなのだろうか。

「黙食を含む食事中の制限など、かなりの我慢を強いられてきた部分が撤廃されたので、ようやく生徒たちは和気あいあいと談笑しながら食事を楽しめるようになり、本当に笑顔溢れる修学旅行が戻ってきた、と実感しています。

生徒たちを引率する先生たちにとっては、修学旅行の負担は非常に大きいものですが、こうしてコロナ禍が明けて、従来の修学旅行が戻り、生徒たちの笑顔を見ると、“生徒たちにとって修学旅行は大切なものであり、教育活動においても本当に重要な行事だよね”と、先生たちの視点からも、改めてその価値が見直されていると感じています」

修学旅行を手掛ける旅行会社視点から、いまの状況を次のように締め括ってくれた。

「コロナ禍で修学旅行の中止が続いて、やっと再開することができたとき、生徒たちはもちろん、先生たちも宿泊施設も、バス会社も、私たち旅行会社も、涙が出るくらいの感動がありました。生徒たちの満面の笑みは、何ものにも変え難い、本当に貴重なものなんだと、旅行会社として関わる人間として、私も強く感じましたね」

また、全てを把握している訳ではないそうだが、ひと昔前と比べるとヤンチャな生徒は少ないらしく、枕投げなどの話はあまり聞かないとのこと。
学びの要素が大きくなったとはいえ、昔と変わらず生徒たちの一番の楽しみは友人たちとの時間で、両親や祖父母へお土産を買っていく彼らの姿を見ると温かい気持ちになるそうだ。


取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班  写真/shutterstock