僕らに相談してほしかったです

小学校時代に「カッコいい」と憧れた自衛官を職業にまで絞り込んだのは、もう少し後のことだ。前出の高校時代の親友はその「憧れ」から入隊までの経緯を具体的に知っていた。

「僕がAくんから自衛隊に入りたいという話を聞いたのは高1のころだったと思います。『寮生活をしてみたい』『家を出たい』というのが理由と言っていましたが、いずれにしてもかなり早い時期から自衛官を志望していたのは間違いありません。彼の誘いで高2か高3の頃に、岐阜県内の自衛隊基地の見学会に、僕も一緒に行きましたから。その後も自衛隊に行きたいという思いは強かったようで、入隊試験の冊子を見て熱心にメモをとる姿を見かけました。自衛隊で何かしたいというよりは『早く家を出て自立したい』という意味合いが強かったと思います」

小学生の頃のA容疑者(知人提供)
小学生の頃のA容疑者(知人提供)

事件の報せは2人の親友にとって、心が張り裂けるような衝撃だった。

「あまり抱え込むタイプではなかったと思うんですけどね。誰でもいいので友達に相談していればまた違ったと思います。誰でもいいんで頼ってほしかったです」(小学校時代の親友)

3カ月前までほぼ毎日一緒に過ごしていた高校時代の親友にとって、今回の事件は信じがたい、まさに悪夢のような出来事だと言う。生々しさで迫ってくる。

「未成年で犯人の名前の発表もなかったので、最初に『岐阜の自衛隊の事件を起こしたのはAくんらしい』と友人から聞きました。僕の知っている限り、Aくんは先生に怒られても、落ち込んだり反抗的な態度をとったりすることもありませんでした。学校で誰かと喧嘩したり揉めたりというのも聞いたことがありません。もちろん何かに悩むことはあったのでしょうが、そういう時は僕らに相談してくれていたと思います。だから考え込まないでいられた環境だったというか。
でも、自衛隊に入って誰にも相談できる人がいなくなってしまったんじゃないかなと思っています。それこそ僕らに相談してほしかったです。彼はスマホも持っていましたし、LINEもやっていたのですが、ここ最近は連絡をとっていませんでした。会ったのは卒業式が最後です。そのときも普段通りに話して『また会おう』と言っていたんですけどね……」

事件現場となった日野基本射撃場(共同通信社)
事件現場となった日野基本射撃場(共同通信社)

 

自分のことをこんなに心配してくれる友達がいることをA容疑者は覚えているだろうか。
18歳になった自衛官「候補生」が撃ったのはシューティングゲームでもBB弾でもなく、89式小銃の5.56ミリ弾だった。

※「集英社オンライン」では、今回の事件について取材をしており、情報を募集しています。下記のメールアドレスかTwitterまで情報をお寄せ下さい。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班