被害者はいずれも候補生の指導担当

現場はJR岐阜駅から北東約5キロの屋内射撃訓練場で、近くには住宅街もあるが、民間人に被害はなかった。

この事件を受けて陸自トップの森下泰臣陸上幕僚長は同日、記者会見を開いて「国民の皆さまに大変ご迷惑、ご心配をおかけして申し訳ありません」と陳謝。「このような事案は武器を扱う組織として、決してあってはならない。非常に重く受け止める」と、調査委員会を設置して原因究明と再発防止を図ると述べた。また、今回の事件を受け、全国の射撃・爆破訓練を中止して、部隊の安全管理を徹底するよう指示したことを明らかにした。

同射撃場は陸自中部方面第10師団(師団長、酒井秀典陸将)守山駐屯地(愛知県)が管理する訓練場。この日おこなわれていたのは、第35普通科連隊自衛官候補生課程の射撃訓練で、指導教官ら約50人を含めた約120人が参加していた。被害にあったのは死亡した25歳の男性隊員と52歳の男性隊員、負傷した20代の隊員の3名で、いずれも候補生の指導担当だったとみられる。

新隊員教習隊の教習射撃(陸上自衛隊第35普通科連隊のホームページより)
https://www.mod.go.jp/gsdf/mae/10d/butai/butai/35i/custom2.html
新隊員教習隊の教習射撃(陸上自衛隊第35普通科連隊のホームページより)
https://www.mod.go.jp/gsdf/mae/10d/butai/butai/35i/custom2.html
すべての画像を見る

同射撃場の近くに住む男性は、興奮を隠せない様子でこう語った。

「私は毎朝6時から犬の散歩をして、日野射撃場の前を通るのが日課で、今朝もいつも通り自衛隊の方たちがトラックで連なって射撃場に入っていきました。10年ほど前はまだ、今みたいな立派な建物がなかったので、鉄砲の音や隊員さんのかけ声も聞こえてきたのですが、建物ができてからは中の様子も音も聞こえなくなりましたね。隊員さんを見かけるのも朝夕のトラックの出入りのときぐらいになりました。

今朝は散歩から帰宅すると、しばらくしてヘリコプターの音がすごかったので山火事か、長良川で何か事故でもあったのかと思っていました。日野射撃場で何かあったとはまったく想定もしていなかったので、事件のことを知って驚きました」

事件現場となった陸上自衛隊日野基本射撃場(写真/共同通信社)
事件現場となった陸上自衛隊日野基本射撃場(写真/共同通信社)

「私がこの団地に引っ越してきたのはもう20年以上前の事です。静かな場所だって言われて、こっちに引っ越してきたのですが、今の射撃場の建物ができる前は、土手に向かって鉄砲を打ち込んでいました。音がうるさいのはもちろんなのですが、土手に打ち込まれた鉛が水に溶けるだとかで、この辺りから基準値の何倍にもあたる鉛の値が出たということで地域の住民が署名活動していたときもありました。そういう経緯があって建物も建てられ、施設内の見学ツアーも行われた。このところは音も聞こえなくなってよかったのですが、まさかこんなことになるなんて……」

最近では地域住民との交流も改善したなかで起きてしまった射撃場内での事件に住民は怯えていた。