子どもがどんどんおかしくなっている
「でも、最近はそういうのもまったくなくなったわね。電車に乗るときに恥ずかしいとか、家に置く場所がないとか、大人はいろいろ考えるのでしょうね」
体験コーナーの提供者である女性は残念そうでした。
実はこれ、2016年の話です。その後、また子どもが飛びつくようになったとは聞きません。この女性や、子どもにかかわって三十数年になる私は、日本の子どもの姿を縦断的に見続けています。それゆえ「子どもがどんどんおかしくなっている様子」がよく見えます。
これに対し、現在進行形で子育て中の親は、自分の子どもと同じ年齢群しか見られません。つまり、見方が横断的なため「みんなそうじゃん」とそこまで気になりません。
女性は6年前に「工作をしなくなったのは4~5年前」と指摘しているので、少なくとも10年ほど前から確実に変化しているのです。
多くの親は子どもを自由に泳がせることができない
これは怖い。かなり警戒しなくてはいけない。何か手を打たなくてはと考えたとき、修正すべきはやはり大人、親のほうだという結論に達しました。
大人に見守られつつ自由に泳がされることで、子どもは初めて自分で考えて行動できます。その結果、時に失敗して叱られたり、怖い思いをしたり、恥をかいたりします。このことが記憶に残って「以前はこうして失敗したから今回はこうしよう」と修正できます。このトライ&エラーを繰り返すことで成長し、脳内に「抑止力」も作られるのです。
ところが、多くの親は子どもを自由に泳がせることができない。自ら考える力、課題解決能力や主体性を、実はわが子に植え付けていないどころか奪っているのではないか。そんな疑問を持ち続けてきた私はこの後、親たちが内面に抱える問題を突き止めるのです。