19世紀の銀行は取り付け騒ぎが頻発したけれど、救出措置は無かった。

そもそも米国には中央銀行がなかった。金融システムがないため信頼は組織レベル、個人レベルで維持されていたのだ。南北戦争以前には民間銀行が独自の通貨を発行し、信用が失墜すると預金者は預金を下ろした。取り付け騒ぎは日常茶飯だった。

1980年代初頭、イリノイ州コンチネンタル銀行が経営破綻に直面し、「大きすぎてつぶせない」と初めて救済措置が取られ、これが「救済文化」の台頭に繫がった。連邦預金保険公社はSVBの預金者に対して行ったのと同じように、大口預金者に無制限の保護を拡大した。

1980年代にS&L(貯蓄貸付組合)が破綻したときも救済措置が取られ、つまりは弱肉強食の米国資本主義が社会主義的な性格に変貌したのである。

S&Lは組合員の住宅資金用の貯蓄と貸付を目的として発展した金融機関だった。個人などから集めた短期の小口貯蓄性預金を、長期固定金利の住宅モーゲージローンで運用した。しかし商業銀行ではないため、小口貯蓄性預金には決済機能は事実上付与されていなかった。

国際システムは崩壊寸前。投資家たちはいっせいに資産をゴールドへ変換! 日経平均3万1000円に踊らされる日本人_6
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金融恐慌への時限爆弾は静かに鳴っているのである

2023年3月29日、米国上院財政委員会は、クレディスイス銀行が隠蔽してきた米国の納税者の家族が保有する1億ドルの口座に関して犯罪的陰謀を指摘した。

米国の実業家らが2億2000万ドル以上のオフショア口座を隠蔽する手助けをしてきた。クレディスイスが隠してきた口座は、それぞれ2000万ドル以上の価値があり、7億ドル以上が米国司法省との司法取引に違反してきた。

ヘッジファンドの損失からブルガリアのコカイン組織によるマネーロンダリングを防げなかったことによる罰金まで、長年にわたる問題を抱えているクレディスイスは、「脱税を容認しない」と述べていた。

金融恐慌への時限爆弾は静かに鳴っているのである。

#1『サントリー「響」の価格を釣り上げた中国人ビリオネアの正体。迫る金融倒産連鎖…個人情報を守れないスイスの銀行を富裕層が見放した!』はこちら

#2『危機のクレディスイス、汚職官僚や犯罪者らの不正資金口座疑惑浮上…中国・深圳に合弁会社を作った矢先の惨劇』はこちら

#4『中国の地銀で倒産連鎖! 共産党による達成不可能な目標、地方政府は債券乱発1000兆円、逃げる海外マネー…「経済の専門家が政権中枢にいない」』はこちら

#5『一気に30万人消失! 台湾人が中国大陸から逃げ出している…技術を盗まれ、工場は乗っ取られ、愛人たちは金を持ち逃げし…』はこちら

国際金融危機!米中メルトダウンの結末(ビジネス社)
宮崎 正弘 
2023年5月17日
1,650円
248ページ
ISBN:978-4828425313
米国・シリコンバレー銀行の経営破綻から始まり、米国の銀行、数行から1日に400億ドルが預金口座から蒸発した。
IT系のベンチャー企業に無理な融資を行い、焦げ付きが生じたと言われている。
さらにクレディスイス銀行、ドイツ銀行などEUの金融大国にも危機が飛び火。中国の資産家や企業も打撃を受ける事態に!
世界経済のバブルが弾ける。そのとき日本経済は生き延びられるか?ドル基軸体制は、いつまで持つのか?
国際資本の伏魔殿の最新情報!

GAFAM黄金時代の終わり/中国経済の大陥没/ウクライナの怪しいマネーが招く大混乱
次の世界恐慌が目前に迫る。


[本書の内容]
ジャック・マーに帰国をうながした中国政府/米国主導だったグレートゲームは終了する?
米国の分裂状態は悪化する/政権中枢に経済通がいない
金融も共産党直轄になるなんて!/海外マネーの逃避が続出している
米国の対中制裁「ブラックリスト」は651社/中国のZ世代は何を考えているのか
それでも中国への油断は禁物/「ドル基軸体制の終焉」が警告され始めた
●もくじ
プロローグ リーマンショックの惨状を超える未来の国際金融の疑獄図
第1章  SVB、シグニチャー銀、クレディスイスの破綻は「金融恐慌」前夜
第2章  米国は中国に勝てるのか?――GAFAMの黄金時代は終わった
第3章  ウクライナの伏魔殿が導く大混乱
第4章  中国経済の大陥没が起きる
第5章  グローバル・パワーとして振る舞いだした中国
エピローグ 大きく揺らぐドル基軸体制
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