廃プラスチックの7割弱を焼却している日本
では、なぜ大量のプラスチックゴミが海洋に流出したのか。米国ジョージア大学などの研究グループは、2010年の1年間に世界全体で800万トンものプラスチックゴミが海に流出したと推定しています。
そもそも私たち人類は、プラスチックを本格的に使い始めた時期である1950年から2015年までの65年間に、世界でおよそ83億トンのプラスチックを生産したそうです。一方、その間に廃棄されたプラスチックは63億トン。プラスチックは商品のパッケージなどに使われることが多いので、生産量の大半はゴミになります。はじめから捨てられるとわかっていて生産しているのですから、生産量が増えれば増えるほど、プラゴミも大量に発生する。これは避けられません。
その63億トンのプラゴミのうち、8億トンは焼却処理され、6億トンはリサイクルに回されました。残りの49億トンは、大部分は埋め立てられていますが、きちんと管理せず野積みしている国もあります。そこから海に流出したものもあるでしょう。
また、リサイクルに回されたプラスチックも、きちんと管理されなければ、結果的に海洋流出するおそれがあります。海洋プラスチックをなくしたいなら、すべて焼却処理するのがもっとも合理的ということです。
ちなみに日本では、うるさいぐらいに「分別収集をしろ」と言われているわりに、リサイクルに回されるプラスチックはそれほど多くありません。環境省によると、2013年に発生した940万トンの廃プラスチックのうち、リサイクルに回されたのは25パーセント程度。67パーセントが焼却され、8パーセントが埋め立て処理されています。
よく「日本は廃プラスチックの8割をリサイクルしている」と言われるので、この数字を意外に感じる人もいるでしょう。これは誰かがウソをついているわけではなく、「リサイクル」の定義の違いによるもの。焼却したときに出る熱を発電などに利用することを「熱回収」といいますが、それも広い意味の「リサイクル」としてカウントすると、日本は廃プラスチックの八割をリサイクルしている計算になるのです。
それはそれで、意味のある定義だと思います。しかし世界標準では、熱回収をリサイクルに含めません。ですから国際的に比較する場合は、日本のリサイクル率は二割から三割ということになるのです。
いずれにしろ、焼却率の高い日本からは、あまり海洋プラスチックが発生しません。世界平均では、プラゴミの2~3パーセント程度が海に流出しているといわれますが、もし日本のプラゴミがそんな割合で流出していたら、近海はゴミだらけになっているでしょう。
たとえばペットボトルだけでも、日本人ひとりあたり、2日に1本ぐらいのペースで使い捨てています。ざっと1日に5000万本がゴミになるとして、その2パーセントは100万本。
私の実家の裏には折戸湾という、かなり閉鎖的な湾が広がっていますが、日本全体で毎日100万本も流出していたら、そこもペットボトルだらけになるでしょう。でも、流れついたペットボトルを時々拾い集めることはあるものの、そんなにひどいことにはなっていません。世界平均と比べると、日本の海洋流出率はかなり低いはずです。