「私の結婚相手を決めるトーナメントを開こうかなと…」
――チャンピオンともなれば、興行の顔として客を呼ばないといけないし、過酷なタイトルマッチを戦わなければいけないですよね。その重圧は感じますか?
感じます。もう、すごいストレスです(笑)。「ベルトは獲るより獲ってからの方がしんどい」って言いますけど、それは本当ですね。私はチャンピオンらしくいられているのか? 話題を振りまけているか? チャンピオンが私で大丈夫か? ……毎日毎日、怖いです。
――どの重圧とどう戦っているんですか?
もう、いろんな人の魂がこもったベルトを巻いているという事実を、自信に変えるしかないですよね。それに、恐怖や悲しみをたくさん感じた人って、オーラをまとっていくと思うんです。だからいま感じているすべての重圧が、私を強いチャンピオンにしてくれるんだろうなって思います。
――自伝『白の聖典』の中で、引退するときは「寿引退」と語っています。どこまで本気かわからないんですが、プロレスラーとしての幕の引き方って考えていますか?
あ、寿引退はほんとうにしたいんですよ。これは一昨日、思いついたことなんですけど、私の結婚相手を決めるトーナメントを開こうかなと思って(笑)。一般公募で集まった男性たちに後楽園ホールで戦ってもらうんです。
――プロレス版の『バチェロレッテ』みたいですね(笑)。
いいかも、それ! ファンが死闘を繰り広げる姿を、ぜひどこかのテレビで密着してほしいですね。最後までめちゃくちゃ話題をつくって、引退したいです(笑)。
――最後に、ベルトにかける思いを聞かせていただけますか?
はい。私はこのベルトを獲ってから、「私をぶっ壊しに来てくれる挑戦者を待ってます」って言ってるんです。私を引退に追い込むくらい、ボコボコにしてほしい。死んでもいいと思ってます。私は残りのキャリアをすべてこのベルトに捧げようと思っているので。
だから、プロレスラーとしての中野たむの最後も、そう遠くないかもしれないです。
#1 騙され続けてきたアイドル・中野たむが、最後に辿り着いたプロレスラーの道
中野たむ選手の宇宙一カワイイアザーカット
取材・文/西中賢治 撮影/武田敏将