ジュリアにはムカついてムカついて、すごく苦しかった

――プロレスラーになってからの一番の転機は、何ですか?

そうだな……。ジュリアと出会ったことかもしれないですね。初めてあいつと対戦したときに、自分の中の闘いの炎が燃え上がる感覚があって。試合が終わって家に帰ったあとも、「ウワー!」ってすごい暴れてました(笑)。

アンチに「宇宙一ブス」と言われても、死ぬまでアイドルでいようと決意した大先輩の一言。スターダム王者・中野たむは「死んでもいいと思って、残りのキャリアをすべてこのベルトに捧げようと思っている」_3

――ジュリアさんは2019年にスターダムに所属、またたく間に団体の中心人物になった選手です。そのジュリアさんのおかげで、闘いの楽しさを知ったということですか?

いや、楽しくはなかったっす(笑)。ムカついてムカついて、すごく苦しかったから。でも、ジュリアとやりあってるときは「生きてるな」って思えたんです。私はこいつと戦うためにプロレスを始めたのかなと思うくらい。

――結果的に、「スターダムの象徴」と呼ばれるワンダー・オブ・スターダム王座も、「女子プロレスの最高峰」という位置づけのワールド・オブ・スターダム王座も、どちらもジュリアさんから獲りましたね。

うん……。それもマジ、腹立つんですけど(笑)。

――そういうライバルに出会えることは、人生でも稀かもしれません。

そうですね。ジュリアがいなければ、こんなに悔しいとか苦しいって思う気持ちも感じないで済んだだろうけど、ジュリアがいたからこそここまで強くなれた。これって、「夢」と一緒だと思いませんか?

アンチに「宇宙一ブス」と言われても、死ぬまでアイドルでいようと決意した大先輩の一言。スターダム王者・中野たむは「死んでもいいと思って、残りのキャリアをすべてこのベルトに捧げようと思っている」_4

――目標という意味の夢、ですか?

はい。人って夢を見ずに現状に甘んじていた方が絶対に楽なんだけど、夢があるからこそ頑張れる、上に行ける。私も岩谷の下にいたころは「自分はこんなもんなのかな」って思ってたんですけど、コズエンとして独立して、ジュリアと出会って、こうしてチャンピオンになれた。悔しさや苦しさが原動力になって、人は強くなれるんだと思います。