自立したときこそ、家庭科で学んだことが活きる

——家庭科は時代の影響を大きく受ける教科だと思います。今の小学校〜高校で教えているのは、どんな内容でしょうか。

今の授業内容を決めているのは小・中学校は2017年、高校は2018年に改訂された学習指導要領です。家庭科というと裁縫や調理というイメージを持っている人が多いかもしれませんが、消費者教育や持続可能な生活様式についての内容、そして家族のみならず地域の人々との共生というコンセプトがクローズアップされてきました。

まず小学校では以前からの内容に加えて、「消費者」や「売買契約」という概念についても学びます。プリペイドカードやインターネットでの取引も教科書に記載されています。キャッシュレス決済の時代になって、「見えないお金」とどう付き合うのかを、子どものころから考えさせるようになってきました。
中学校ではこの内容をさらに深掘りして、消費者の権利と責任、消費者被害とその対応についてなどを学びます。またクレジットカードによる三者間契約の仕組みについても学びます。

そして高校では「生涯の生活設計」が科目の導入及びまとめとして位置づけられ、生涯発達の視点からライフコースを展望し、衣食住などに関する他の科目とも連携しながら、自身の生活設計について考える学習が展開します。高校家庭科で資産運用について学ぶようになったことは、たびたび報じられたと思います。人生100年時代といわれる現在、生涯を見通して生活を創造するという観点から、生きていく上でのリスクマネジメントについて学びます。

技術・家庭科が男女共通になって30年。それでも女性的イメージが付きまとう理由と「男性家庭科教師」が担う大きな役割_2

——今の家庭科では、家庭の資金管理に活かせるようなことも学ぶのですね。「そんな内容は生徒には早いのでは?」という声もありそうですが…。

そのような声もありますが、世の中は現在進行形で変化しています。学校教育は「未来への投資」だと考えています。学校では子どもたちが今必要とすることだけでなく、大人になってから必要になることも教えているのです。

特に家庭科の知識が本当に活かされるのは、親元を離れて社会に出てからでしょう。だからこそ、10年後の社会を見据えた授業を行っています。