育休中の男性刑事が主役のドラマ『育休刑事』がNHKで放送開始された。
主役の秋月春風役は金子大地。育休取得中でも次々に彼の元へ事件が押し寄せ、事件を解決していく。春風の姉・吉野涼子役には前田敦子。彼女が事件捜査を素っ頓狂な発想と行動でサポートする様子が楽しい……のはいいけれど、ふと脳裏をよぎった「最近のNHK、“育休”関連の番組が多いのでは?」。
地上波をこよなく愛し、朝から晩まで視聴を続けている私の目はごまかせない。なぜ、今“育休”を頻繁に題材として扱うのだろうか。
「心が折れかけている」という男性の子育ての実状を放送しているが…
NHKで放送されている朝の情報番組『あさイチ』は、放送内容がとても潔い。午前中、民放局のワイドショーでコロナ、不倫、著名人の訃報といった時事ネタを流していようとも、知らんふり。更年期、レシピ、就活、介護などあくまでも生活に役立つ情報を提供している。私も番組のファンだ。同じようなニュースばかり流されて、視聴者が辟易している中、全く違う情報が流れてくるのは癒しのような存在だ。
そんな『あさイチ』で今、視聴者にとって関心が高い情報として選ばれたのは、男性社員、つまり夫の育休制度について。確か4月中旬に放送されていた。実際に育休を利用している男性に取材をして、育児うつなど男性育児の実態に触れていた。独身子なしの私も「へえ」と唸りながら、見ていたけれど違和感を覚えた。
彼らが話していることは、母親が育児をするにあたってぶち当たる悩みなのではと。
そのほかNHKオンラインでは、育休取得に関する取材記事が頻繁にアップされるようになった。対象者はプロレスラーや永田町の官僚と、職種はさまざま。ここにも「心が折れかけている」「育児をしながらメール対応」と『あさイチ』で見かけた、悩みが吐露されている。
ままならない、実状を伝えるということは、同じく取材をする仕事をしている立場からの見地として正しいと思う。ただ一方で「父親も育休を取りましょう」「企業が協力します」とさもハッピーライフを提示してくるという、事実もある。日本国内のどこかで、この件に関して日々議論されている。このダブルバインドは、いかがなものか。