コーラがぶ飲み、夜通し半身浴でインターハイ準優勝

大会があると、必ず中嶋はエントリーすることになっていた。

「ある日、久しぶりに部室に行ったら『明日出発やぞ』って。『え、何がですか?』って先生に聞いたら沖縄で開催されるインターハイに出場すると。普段53kgあったんですけど、試合はピン級の45kg。なので、それ聞いた瞬間から絶食ですよ。

沖縄に着いたら徹夜で半身浴やって体重落として、ヘロヘロの状態で試合出て。練習してないしどうせ負けるやろと思ってたら、勝ってしもうて。

計量終わったら、ジュースとかラーメンとか飲み食いしまくるんですよ。でもアマチュアの大会は勝つと連日試合があるんで体重をキープしないといけない。試合終わったら51kgとかに増えてて、それ知って高見先生にまた激怒されて『ホテルまで走って帰ってこい!』って」

「ぱっと世界王者になって金稼いで帰ってくるわ」。ボクシング界のスター・井上尚弥の影に隠れたもう一人の天才。練習は月3回、投げ飛ばし、2日酔いで計量失格…それでも国体王者になった中嶋一輝の現在_3
「真面目すぎるくらい」と担当トレーナーは話す

しかし、走るのはイヤだった。付き添いの部員に『頼むでほんま』と突っ込まれながら、右手にコーラ、左手に煙草の箱を持ってとぼとぼ歩いてホテルに帰った。それから、「しゃあないから」と、1人夜通しで半身浴して体重落として、次の日また試合に臨んだ。

そんな状態で試合をしていた中嶋は、そのインターハイでは準優勝している。

「でも、ちゃんとほんまに毎日練習してるヤツには勝てなかったですよ。センスだけでやってましたから。高1のインターハイでは拳四朗選手(現ライトフライ級世界王者の寺地拳四朗)に負けてますし、高2の国体では尚弥にまたKOで負けています。尚弥との差は、縮まってなかったです」