8年連続で会員は増え続けた
元プロボクサーで東洋太平洋王者の今岡武雄氏が代表を務める「BOXING CLUB」は、2023年4月現在東京・埼玉・大阪で全9店舗まで拡大している。この規模のボクシングジムは現在もほとんどない。近年はフィットネス系ボクシングジムも人気だが、2003年の創業当時は現在ほど同様のジムが都心部にはなかった。
「競合がおらず、圧倒的なブルーオーシャンだったのが上手くいった要因のひとつでした」(今岡さん、以下同)
そもそも、ボクシングジム経営が「上手くいく」とはどういうことなのか。もしかしたら一般の方は「タレント事務所みたいに一部のスターが会社や従業員、他の所属プロを支えている」というイメージを抱いているかもしれない。
「人気興行を打つことができる超大手を除き、ほとんどのジムは一般会員の会費収入が収益基盤です。また日本王者や東洋王者はおろか、仮に世界王者を育てることができても、必ずしもジムに安定した収益が約束されているとは言えないと思います。しっかりとプロを育成してチャンピオンを誕生させるためにも、それが目的でないボクシングジムの場合も、前提として一般会員を集客して、経営を安定させることがジム運営において必須だと思います」
少し複雑な説明となるが、国内のプロボクシングの試合に出場する選手は、日本プロボクシング協会(以降協会)に加盟しているジムに所属している必要がある。今岡氏のBOXING CLUB(旧イマオカボクシングジム)も、第1号店が軌道に乗ったあとに協会に加盟して、プロ選手の育成をスタートした。つまりボクシングジム経営は、「プロのためだけのジム」ではなく、「一般会員あってのプロ育成であり、ジム経営」が実状だ。
ちなみに今岡氏はかつて所属していたジムの恩師である齋田会長から、「選手育成はジム運営が安定してからやれ」と言われたという。
「選手育成は生半可な向き合い方ではできません。繰り返しになりますが、まずはきちんとジム運営を安定させないといけないということです」
しかし、今岡氏のジムは今はもう協会を脱退して、プロボクサー育成はしていない。コロナ禍で会員が急減し、創業以来最大のピンチが訪れたからだ。