「ゼロ打ち」と「過渡期」

ともあれ、無事に大盛況だった下関特別上映会。そして有田候補と吉田候補の一騎打ちに何かが起きそうな予感と期待を勝手に抱いていた。

そして3日後。

4月23日、20時ちょうどの開票速報。NHKはたった15分だけの速報番組を放送。スタートとともに結果が出たのは、山口4区だった。自民党・吉田候補と立憲民主党・有田氏の一騎打ちは、いわゆるゼロ打ちで吉田候補の勝利だった。「なんとかゼロ打ちは阻止したい」と話していた有田氏には、厳しい結果となった。

続いて(ネットで見ていたテレビ西日本の開票速報では)8時10分過ぎには山口2区の岸田信千世候補の当確が出た。中継では万歳唱和で「衆議院議員、岸田信夫当選!」といまだ身内にも名前を間違えられるご愛嬌ぶり。こうしてついに“妖怪の孫の甥”も議員となった。

その後、山口4区で敗れた有田氏の敗戦の弁が届いた。
「全くへこたれていない。私の街宣車の周りには常に熱狂が続いていた。みなさんの熱い期待と元気をもらえたから、これほど楽しく、愉快な選挙ができた」

山口4区の確定投票率は34.71%で、2年前の衆議院選挙を13.93ポイント下回る、過去最低の数字となった。おそらくこれは、林派が離脱した線が濃厚だろう。

得票数は吉田候補が5万1961票。目標としていた“圧倒的勝利”の8万票を大きく下回った。一方、有田候補は2万5595票。予想よりも健闘したが、前回 2年前 安倍元首相の80448票に対し、れいわ新選組の竹村克司氏が19096票だったので微増といったところか。

だが、有田氏は敗戦の弁でこうも話していた。

「1953年から70年続いた岸・安倍という風土が溶けつつある。今回は声援ももらえた。ポスターも貼ってくれた。これまでとは全く違った風景が見えた。今が過渡期だ」

過渡期であることを信じたい。

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取材・文/内山雄人

前編:〈衆院山口4区〉あの“妖怪”の選挙区に安倍元首相の亡霊が…映画「妖怪の孫」監督が見た「衆院補選」と「下関特別上映」 はこちら

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「パンケーキを毒見する」の内山雄人監督が“日本の真の影”に切り込むドキュメンタリー。昭和の妖怪と呼ばれた政治家・岸信介の孫であり、連続在任日数2822日を誇るも凶弾に倒れた元総理大臣・安倍晋三。彼の政治を総括し、日本の姿、その根本にあるものを紐解く。企画は「かぞくのくに」「新聞記者」「i 新聞記者ドキュメント」など数々の問題作を生み出してきたスターサンズの河村光庸

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