「1週間で上映終了」は安倍元首相の妖術?
3月17日に公開された安倍元総理をテーマにしたドキュメンタリー『妖怪の孫』。その主題のためか上映館も中々広がらない中、公開後、観客のSNSや口コミによって拡散され、ひと月後には観客動員3万人を超える大ヒットとなった。その勢いはまだまだ続いている。
とはいえ安倍元総理の映画となると「やらない、又は、やれない」と判断されることも少なくない。上映館でさえポスター掲載、予告編上映を控えられる異例の制約を受けている。”安倍さん”には何か特別なチカラがつき纏うようだ。
安倍家のお膝元、山口県でも切望された末、4月7日から1館だけ上映されることが決定したのだが、喜んでいた矢先、たった一週間でなぜか上映終了となった。これも安倍元首相の“妖術”なのか。
だが、中国地方で唯一の上映、何より山口県での上映がないのはあまりに寂しい。ところが、劇場での公開がなくなったことで急遽、浮上したのが、下関での自主上映だった。かねて映画センターや市民から熱いメッセージが届いていたが、映画館優先のルールから自主上映は夏まで待たねばならなかった。
だが状況が一転したことで、トントン拍子に話が進み、なんと安倍元首相の選挙区のど真ん中、下関市(山口四区)で全国初の自主上映が、平日二日特別限定で選挙直前の4月19・20日に開かれることになった。
山口4区といえば、安倍元首相の死去に伴う衆院補欠選挙が、統一地方選と同じ4月23日投開票で行われる。この選挙は安倍昭恵さんや安倍後援会一押しの自民党公認・吉田真次元下関市議(38歳)と立憲民主党公認で前参議院議員の有田芳生氏(71歳)の一騎打ちの様相だった
恐ろしく頑強な保守の地盤に有田氏は「有権者に選択肢がある事を示したい」と立ち上がった。その戦いの最中に映画「妖怪の孫」がドカンと投下されるわけである。当地は取材でお世話になった街であり、本作がどのように受け止められるのか、監督である私自身が目撃したいというワクワクで堪らなかった。何が起きるのか、それとも何も起きないのか。