「統一教会問題を一切、語らないのはなぜですか?」
二日目となる4月20日の夕方。上映時間の合間に自民党・吉田候補の演説会に向かった。公民館は警察や警備が車の誘導に駆り出されるほどで、観客は150名はいるだろうか。入口で金属探知機や荷物検査を受けたが、意外にも動画撮影を許されたので助監はつぶさに記録し始めた。
本作でも紹介した安倍元首相の弟分、元下関市長の江島参議院議員と共に、茂木幹事長の応援演説が始まった。話題のバッグ型折りたたみ盾を持つ、いかついSPが左右に控えている。会場全体が自民党スタッフのピリピリした緊張感に溢れ、応援に来ているのも温かい市民ではなく、“お仕事”できている人たち…のように感じたのは、あまりに穿った見方だろうか。
続いて「主人の…」で始まる、安倍昭恵さん涙を流さんばかりの演説で空気の重さがさらに増した。
主役の吉田候補はといえば「地元の声援の温かさ話」だけで、政策話はゼロ。そんな中、突然、観衆のひとりが大声で「統一教会についてあなたは!」と発して、スタッフに制せられる一幕も。だが、それに対しても吉田候補は「私は今、あえて統一教会の話はここではしません」と訳のわからない返答をするだけ。
だが、統一教会にまったく触れないあたりに、関係の根深さが透けて見える。彼はむしろ嘘をつけないタイプと感じた。その後、出口で握手のお見送り。ここは『妖怪の孫』のチラシを吉田候補に突きつける絶好のチャンスだ。
「『妖怪の孫』という安倍元総理の映画を今、下関で上映していまして…」
と私が言うと、突然、吉田候補の表情が険しくなり、さっとチラシを裏にして、私の手を払いのけた。
「統一教会問題について、一切語らないのはなぜですか?」
と、さらにたたみかけると、次の瞬間、自民党スタッフが無理やり私を押し除け、列の端に追いやられた。この決定的瞬間を当然、カメラが撮っているはずだ…と助監督をみると、首を振って絶望の表情。
その前からマークされていた彼は、カメラを構えた瞬間から払いのけられ、Recボタンを押すこともできなかった…なんたる無念。市民の疑問や意見を全く受け付けないこの空気…まぁ、こちらは下関市民ではないですけど。