かなだいのアイスダンスの色とは?

その向上心が、冒頭で記した世界選手権での快演に結びついた。

RDから本領発揮だった。高橋がツイズルを回りすぎるハプニングはあったが、動揺していない。

「(景色が)スローモーションになるくらい、めちゃくちゃいろいろ考えていました。ヒヤッとしましたね。アイスダンス1年目だったら焦ってしまい、最後まで引きずっていたかもしれません」

高橋は語ったが、そのリカバリーに彼らの「歴史」が見えた。72.92点と11位でのスタートだった。

そしてフリー『オペラ座の怪人』で冒頭から観客の気持ちをつかんだ。ストレートラインリフト+ローテーショナルリフトとレベル4で高得点を得る。苦労してきたツイズルもベストに近かった。ステーショナリーリフト、ダンススピンもレベル4を叩き出した。

「後半、ダンススピンが終わった後、今日はバテずにパワーが残っていて。むしろ最後に向け、どんどん行ける感じでした」

高橋はそう振り返った。アイスダンサーとしてパワーを効率よく使えるようになっていた。

「いい練習を重ねてきた成果だと思います。おかげで緊張度が高い中でも、メンタルコントロールができたかなって。お互いの息が合っていたからこそ、体力を削ることなくよかったのかなと思います」

最後はコレオリフトを成功させ、大団円となった。氷上のふたりが発した熱で、観客も含めて全員が結びつく。会場がまるでひとつの生き物のようにうごめき、ふたりはその心臓のように力強く脈打った。

「自分の場合は今まで(アイスダンスを始めたばかりで)情報量が多すぎたから、それを整理しているところで」

高橋は全日本選手権後のインタビューで、「今シーズンのアイスダンスを色に例えると?」という問いにこう返していた。

「気持ちの中でいろんなものを削いでいって、シンプルに過ごしていれば、自分の色になるって思っています。白いキャンバスというよりも、一回、色がついたものをなくしていく作業みたいな。

もうちょっと細かいところ、見えないところまで、どこが汚れているのか、それを落として白くしていく。そんな感じかな」

真っ白への衝動が、「永遠の一瞬」の風景をつくり上げた。

一方、村元にはこう訊いていた。

――もしアイスダンスを始めたときの自分にタイムマシンで会えたら、なんと伝えますか?

「私はシングルからダンスに変わり、自分でもびっくりするくらい練習熱心になったんです。シングル時代は練習してなかったなって(笑)。

ダンスに打ち込み、スケート大好きって思いました。だから、『とにかく辛くても練習続けろ!』って言いますね。

『いつか大ちゃんと組む』とかは絶対に言いません! 『自分が信じたことを貫いていきなさい』って。そしたら、ここに来られるはずなので」

来た道は間違っていなかった。

結成から3年、彼らはアイスダンス界で名前を刻んだ。金字塔を打ち立てた。特に高橋は“初心者”だったのである。