よいチームの条件
ギグワーカーはウーバーイーツのドライバーや配達員のことだと思われているが、もともとはジャズメンやロックミュージシャンの「ギグ」、つまり気の合った仲間同士の即興演奏から生まれた造語だ。
ギグワークの典型は映画製作で、プロデューサーが企画を決めて資金を集めると、そのプロジェクトのために監督や俳優などが集められ、多様な才能をもつクリエイターたちのギグによって作品がつくられる。
ここで重要なのは、個人の才能だけではなく、その仕事(役)なら誰が向いているかを知っているネットワークだ。
集団は個人の総和を上回るパワーを発揮することもあれば、暴走して大きな損害を生むこともある。
なぜこんなことになるのかについては多くの研究があるが、それをまとめると、よいチームの条件は次のようなものになるだろう[*2]。
*2 橘玲『バカと無知』新潮新書
① 能力の劣る者を集団から排除する(ヒトには生得的な平等指向があるので、能力の高い者は、無意識に能力の劣る者に引きずられてしまう)。
② 明確なミッションを与え、序列をつくらず、誰もが対等の立場で自由に意見をいえるようにする(意見の対立がアイデンティティの対立になると収拾がつかなくなる)。
③ 集団の多様性を高めてイノベーションを促す(全員が高い能力をもつが、文化や宗教、性的指向などが異なると、思いがけないアイデアが出て創発効果が生まれる)。
こうした集団を意識的につくろうとしているのがGAFAなどシリコンバレーのハイテク企業で、世界中から(とてつもなく)賢い若者を集め、「未来を変えるムーンショット」というミッションを与え、多様なメンバーに対等の立場で徹底的に議論させることでイノベーションの競争に勝ち残ろうとしている。
それに対して日本の企業は、「日系日本人、中高年、男、特定の大学の学部卒(ほとんどが文系)」というなんの多様性もないメンバーが派閥や序列をつくり、アイデンティティ(自尊心)をめぐって対立しているのだから、グローバルな競争から脱落していくのも当然なのだ[*3]。
*3 橘玲『不条理な会社人生から自由になる方法 働き方2.0vs4.0』PHP文庫
文/橘玲 写真・イラスト/Shutterstock