大手広告代理店の新入社員はなぜ死んだのか?

大手広告代理店に入社してわずか8カ月の女性社員がクリスマスの晩に投身自殺したことで、日本企業の長時間労働とパワーハラスメントが強い批判にさらされました。会社側は

「現場へのプレッシャーも含めてマネジメントが配慮すべきだった」
「複雑で高度な作業に対して恒常的に人手不足だった」

と説明しており、新人社員が混乱する現場と稚拙なマネジメントの犠牲になったことは明らかです。批判を受けて広告代理店は、本社ビルを夜10時に一斉消灯するなど深夜残業を抑制する措置をとりましたが、こんなことではなんの解決にもなりません。

広告代理店はこれまで、テレビと新聞・雑誌を主な媒体として営業を行なってきました。それが2000年代に入って急速にインターネットにシフトしたため、従来のビジネスモデルを大きく転換しなくてはならなくなりました。

欧米企業はこのようなとき、まずはインターネット広告に精通した人材を外部(たとえばヤフーやグーグル)から引き抜き、プロジェクトチームのトップに据えます。チームのメンバーも、プログラミングやWEBデザインの経験がある若手をベンチャー企業などから集めるでしょう。まったく新しい分野なので、本社の社員は他部門との連絡役がいればいいだけです。

こうしたエキスパート集団なら、ネット広告のイロハも知らない新人が配属され、素人同然の上司に翻弄されて擦り切れていく、などという事態は考えられないでしょう。だったらなぜ、こんな簡単なことができないのでしょうか。