会議室の取り方から勉強
――アナウンサー業と、アパレルブランド、まったく違うお仕事をスタートするに当たり、戸惑ったことはありますか?
日本テレビの社員としてもう10年以上働いていますが、どうやって会議室を借りるのか、社内に提出する書類のフォーマットはどうなっているのか、知らないことばかりだったことがショックでしたね。
――それまでやる必要がありませんでしたものね。
そうなんです。予算や、業務で黒字化を目指すという感覚も希薄でした。Audireは社内の新規事業にあたりますが、そこには当然、割り当てられる予算というものがある。
もっと言えば、出演している番組にも、もちろん予算があって、その中で作られています。アナウンサーはあまりそういうことを気にせず職務を全うしてほしい、という空気に甘える部分もあったな、と愕然としましたね。
でもAudireをきっかけにそんなことを考えることができたのは、自分にとって財産だと思っています。
――そうやって、ひとつひとつ解決しながらプロジェクトを進め、お洋服ができてきたときは…?
サンプルが上がってきたときは、感動しました。
みんなでアイデアを詰め込んだデザイン画が、こんなふうになるんだ!と。
展示会で感じたのは、実際のモノがある喜びです。
――どういうことですか?
テレビはコンテンツとして消費されるもので、手にとって触れるものではないんですね。ところがお洋服は、触って着てもらえるんです。「私たちはこんな思いを込めて作りました」と直接伝えて、その場で感想を聞かせてもらえる。
そして、そのモノを買ってくださった方がSNSなどで「このような場所に着ていきました」「このようなコーディネートをしてみました」と発信してくださる。
この感動は、テレビだけでは味わえない喜びだと思います。
――逆に、難しいと感じることはありますか?
展示会では接客もしたのですが、「これはポケットを斜めにつけたのがこだわりなんですよ」なんて話をしつつも、思いを押し付けてしまっていないか気を使いました。
たとえば、私が大好きな『名探偵コナン』の話をテレビや取材でするのであれば、多少押しつけがましくても(笑)、熱を持って語ることも大事かなと思うのですが、洋服の場合はおひとりおひとりのニーズもくみ取りつつなので、難しいですね。