「食品安全委員会がコオロギ食の危険性を指摘した」はデマ

ひと通り作業を見せてもらい、記者が工場を後にすると「どうでしたか?」と小澤尚弘氏が笑顔で出迎えてくれた。商品を作るうえで特にこだわっていることを尋ねると「パッケージに必ずコオロギとカタカナで書くこと」と答える。

「英語でコオロギという意味の“クリケット”にしてぼかしたり、名前を隠した方がいいという意見もありますが、あえて弊社はコオロギと表示しています。やっぱりちゃんとコオロギと認識して受けいれてほしい気持ちがあるからです」(小澤氏)

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作業する工場の従業員

一方で、コオロギ食の安全面についてはどのように考えているのだろうか。
「危険だという人たちが何のエビデンスに基づいて言っているのかがわかりません」と小澤氏は話すが、2018年8月、欧州食品安全機関(EFSA)が新食品としてのヨーロッパイエコオロギのリスクプロファイルを公表。
その中で「総計して、好気性細菌数が高い」などといった懸念事項が並べられており、翌月、内閣府の食品安全委員会もこの文書を紹介していた。このことから「コオロギ食の危険性を食品安全委員会が指摘した」との情報もSNSで拡散されているが……。

「あれは欧州連合(EU)の専門機関EFSAの文書を紹介しているだけで、内閣府食品安全委員会が言っているわけではないんです。
内容に関しても、食品全般に言えること。例えば肉や魚をなんでも生で食べたりはしませんよね。それは細菌が多いからです。だから昆虫食もそれと同じことですし、コオロギだけが危ないのではなく、食品全般が適切な調理をしなきゃ危険性があるということ。コオロギは国連食糧農業機関(FAO)も推奨している食品です」(小澤氏)