「こういう報道になっていることに戸惑っております」
生徒同士で食用の乾燥コオロギを食べるゲームをしていたのを小松島西高校の教諭が見かけたことが、コオロギ食の給食導入のきっかけだった。当初、教諭は楽し気にコオロギを食べる子供の順応力の高さにただただ感心したそうだが、自身も気になりコオロギを食べてみるとその美味しさに驚いた。これは食の抱える課題や環境に関していい教材になるのではないかと思ったのだという。
小松島西高校の教頭は語る。
「SDGsの学習の一環で食料危機問題や食品ロスについて、生徒たちに考えてもらえると思い、同じ地元の徳島大学発ベンチャー企業のグリラスに相談をしました。最初は去年の夏ごろにグリラスの方に学校で講演していただき、アレルギーに関する説明も行った上でコオロギパウダーの試供品を生徒に配りました」
まずはコオロギ食について知ってもらい、その後、給食で試食しては、という流れだったそうだ。
「給食というと全員に配膳したと勘違いされるのですが、実際は集団給食という授業の中で試食は行われました。本校の食物科では集団給食の授業で生徒が調理した給食を、希望する生徒や職員がチケットを購入して食べます。なので、給食というよりは学食のイメージです。そうした形で11月にコオロギパウダーを使った『かぼちゃコロッケ』を、2月にコオロギエキスを使った『大学いも』を提供しました」
およそ170人ほどが試食に参加したが、生徒たちの反応は「香ばしい」や「コオロギが入っているとわからなかった」など概ね好意的だったという。学校側は教育の一環としていい機会になったと考えていたが、この様子がネットニュースで報じられると状況が一変したという。
「問い合わせの電話は増えました。『全員に食べさせているのか?』や『安全性は大丈夫なのか』などといった内容です。今後に関しては今のところ昆虫食を学校で扱う予定はありません。正直に申しますと、こういう報道になっていることに戸惑っております」