岸田首相は「高市更迭」を様子見

〈放送法と官邸圧力〉「高市大臣更迭は本質ではない」「放送法を国民の手に取り戻すために放送法4条はただちに削除を」元経産官僚・古賀茂明氏_2

――ただ、世間の関心は16年統一見解の撤回より、高市大臣が辞任するかどうかの一点に集中しています。

完全に論点がずれていますよね。小西参院議員は総務省職員から「国民を裏切る行為をこのまま見て見ぬふりはできない。国民の手に放送法を取り戻してほしい」と言われ、この文書を託されたと聞いています。それを考えるなら、政治権力の介入を許しかねない16年の政府統一見解の撤回こそが、今回の行政文書流出事件のメインテーマとなるべきでしょう。

ところが、高市さんが小西議員らの追及に感情的になり、「文書はねつ造」だの、「自分が間違っていたら大臣も議員も辞める」だのと言ってしまったので、そちらにばかり世間の関心が行ってしまった。官邸の振り付けにしたがって放送法4条の解釈変更や停波を口にした高市さんの政治責任は重大ですが、その進退問題はある意味、二の次。

本当に国民にとって重要なのは表現の自由や国民の知る権利の侵害につながりかねない放送法の解釈変更の撤回の方です。

――岸田首相にすれば、論点がずれて注目が高市さんばかりに集まるのは悪いことではないのでは?

自分への風当たりがそれだけ弱くなるわけですから、内心では喜んでいるかもしれません。おそらく岸田さんはいま4月の統一地方戦を前にして、高市大臣を更迭すべきか、続投させるべきか、様子見をしているのでしょう。

高市さんを切れば、彼女を熱烈に支持する右派岩盤層を敵に回すことになる。その一方で、引き続き閣僚として彼女を続投させれば国民の批判を受けかねない。どちらが政権延命のプラスになるか、必死で計算をしているはずです。