給食配布時の画伯

私には、このアルミパック米飯の思い出がもう一つある。

アルミパックのフタに、ツメで溝を掘って落書きをしたことだ。勉強も運動も得意でない私にとって、特技は絵を描くことくらいだった。米飯が配られると「いただきます」の全員挨拶までの少しの時間で、フタにアニメのキャラクターなどを描いた。それを周りの友達が見に来てくれて、ちょっとした人気者になれたのだ。好きな女の子の気を惹くためという密かな目的もあった。

給食を食べ終わると、アルミパックはフタも全部平べったく潰して回収されるので、フタのアートは毎回ごく短命に終わり、幻の拙作が山ほど生み出されては消えていった。

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湧き上がる給食の風景

給食時間は席の近い6人ほどで"班"を組み、メンバーが机を向かい合わせて島を作って食べるのが習慣だった。

持参したふきんを机上に敷いたら、四角いくぼみがあるランチプレートを持って給食当番の前に並び、くぼみにおかずを盛ってもらう。食べるのに使ったのはお箸でなく先割れスプーンだった。

牛乳は、小学校4年生までは瓶入りだったが、5年生から紙パックに変わった。誰かが飲むと、必ず笑わせにいく同級生がおり、数日に一回ほど"鼻から牛乳"の大惨事が起こる。そしてそれを拭いた雑巾がとんでもなく臭くなる。

さらに給食の他に、稀に3時間目の休み時間に、三角パックの「みかんジュース」が配られることがあった。先の給食課によれば、静岡農協の好意で供されたものだったそうだ。

小学校における食の記憶がこれほど多く、そしてずっと眠っていたことに、我ながら驚いてしまった。

眠っていた記憶を呼び覚ます給食

遠い郷愁から我に返ると、50代を目前にした私が渋谷の小さな音楽室に座っていた。故郷から遠く離れた場所で食べた給食が、40年近く前の小学校での思い出につながり、そこから芋づるを引くように様々な記憶が蘇る。

食前の給食当番のこと、食後の昼休みのこと。1回ではとても書き切れない。

『6年4組 渋谷分校』は、土日祝日にはランチを楽しめるが、平日は夕方から居酒屋営業をしている。次は当時の同級生たちと来て、机を向かい合わせ、給食を肴に酒を楽しもうと決めた。

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文・イラスト・撮影/柴山ヒデアキ
撮影協力/「6年4組 渋谷分校」東京都渋谷区宇田川町32-12 アソルティ渋谷4F
℡050-3196-9571 営業:平日17-23時 土日祝12-23時
https://www.6nen4kumi.com/shibuya/
取材協力・資料提供/静岡市給食課 静岡県学校給食会 浜松市教育委員会