開始から4時間、彼女の前に現れた救世主
しかし、昼前に降り始めた雨はそうはいかない。MISAさんは雨の当たらない屋根の下に移動し、乗せてくれる人が現れるのを待つ。
1人の男性が話かけていき連絡先を交換するも、そのまま立ち去ってしまう。
「珍しいから話しかけてみたそうです、仕事が終わってまだ私がここにいたら、乗せてくれるかもしれないそうです」
まだ確証はないが、ひとまず希望を見出せたMISAさんは、その安堵から自然と表情が緩む。
昼過ぎ。雨はみぞれや雹に変わり、その勢いも激しくなり始めた。
さすがのMISAさんも時折体を震わせている。それでも話しかけてくる人はほとんどいない。
ヒッチハイクを始めて約4時間。体力も限界を迎え始めたようで、サービスエリアの建物内の入り口横へ移動する。
今日はさすがに厳しいか。取材班も半ば諦めかけているなか、ヒッチハイクの神様は彼女を見捨てなかった——。
「お昼頃に声をかけてくれた男性の仕事が終わったらしくて、これから迎えに来てくれると連絡来ました! (岐阜県)恵那市の恵那峡まで送ってくれるようです!」
時刻は16時。
「もう少しで最長記録を更新するところでした。本当にこの男性に感謝です! 乗せてくれた人が共通してよく言うのは『女の子だから乗せた』というのはあります。男性だと怖いみたいですね。だから女性のほうがヒッチハイクはやりやすいのは事実だと思います」
と興奮気味に話す。
前編では、無一文だからこそ宿泊場所の提供などの厚意に甘えられることもあると話していた。つまり意地悪な言い方をすれば、他人の厚意に頼ることが前提の旅といえなくもない。
そこを聞いてみると、MISAさんは真剣な表情で考え込み、こう答えた。
「普通に仕事をして頑張って自分で生活している人からしたら、お気楽だって思われるかもしれませんが、あんまり周りの意見は気にしてないです。
この生活も今、自分が若いから許されているという自覚はあります。だから子供だと思われているうちにやりたいと思ったんです。でも一生ご厚意に甘えて生きてくつもりはありません。
乗せてくれる人は私のことを応援してくれてるし、私も旅をしていないときは旅人にご飯をご馳走したりもします。親切は自分に返ってくると思うし、そういう親切をめぐらせて日本が親切で優しい国だって発信したい気持ちもあります。
いずれにしても私の旅に否定的な意見を言う人はそもそもヒッチハイカーを乗せるような人じゃないし、私がその人に迷惑をかけるわけじゃないから……」